選ばれる者
二重楽器を探すには、適性がある人間が同行した方が都合がいい。
東のレイクフォルトには、カエルレウム公爵の部隊。
西のイグニス砂漠には、火竜の騎士セトにククルとセノーテが同行することになった。
学生寮・談話室
「ククル君は、イグニス砂漠方面なんですね」
ステラに声かけられ
「そういや、上級生もレイクフォルトの探索に組み込まれてるんだっけ」
お互い神獣には気をつけよう、とククル。
「……そうですねぇ」
ステラと別れて、ククルは竜舎の方へと向かう。
響いてくる低く太い音ーー
(コントラバスか……)
「マティア様、後は私が……」
「いいや、たまには弾かせてくれ」
白い服を来た王宮竜奏医師と、コントラバスを弾くマティア。
「マティアさん、コントラバス弾けたんだ」
ククルに言われ
「私は、体を動かしてる方があってるんだが」
たまにはいいだろう、マティア。
寝床で、まどろんでいるウェルテクスを見て
「ウェルテクスは、コントラバスの音が好きみたい」
ククルが言う。
「……そう言えば、ウィツィもコントラバスを弾いていたな」
「あいつは、昔から何でも楽器を使えた」
正式な二重楽器の所有者とは思えないけど、とククルは肩を竦める。
「選ばれた者には、音が聞こえる……だったか」
私は違うようだと、うつむいたマティア。
「気にしてる?」
ククルに問われ
「すまない。落ち込むなど、らしくない」
マティアは、溜息をついた。
「今回、私は竜都の防衛任務だ。気をつけてな」