適性
「人間の女には興味がない。俺は竜と結婚して、ドラゴン・ハーレムを作る」
堂々と語るセトに
「また、そのようなことを……」
火竜のアルドルは、溜息をついた。
「今回同行された王宮竜奏医師のリリアさんは、家柄も申し分ありません。若に好意がある様子でしたのに、無下にして……」
わたくしは悲しいです、とアルドルは嘆く。
「いいんだよ」
セトは肩を竦めると
「姫さん、そろそろ出て来たらどうです?」
貴方の行動は団長にバレバレですよ、と続ける。
「……」
眉を寄せたセノーテの姿を見て
「このまま同行してもらいますよ。もう片方、捕まってる頃でしょう」
意地の悪い笑みを浮かべた。
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「この、クソ猫め……」
寮の通路の真ん中で丸まっているルナに
「ニャーン」
「ぐぐぐ……」
ククルは悪戦苦闘。
「よう、小僧」
夜中に出かけるのは感心しないな、とロスに頭を掴まれた。
「さて、校長にたっぷり説教してもらうか」
「離せー」
あの人苦手なんだよ、とククルが暴れる。
「あ、ロス叔父さん」
「よお、セト。久しぶりだな」
あいかわらずドラゴンマニアからしいな、とロス。
「叔父さんこそ、久しぶり」
以外と教師の仕事も長続きしてるな、とセト。
ロスに拘束されているククルは、二人の顔を見比べ
「親戚……?」
「ロス教官と火竜の騎士セトは、叔父と甥っ子の関係ですわ」
セノーテが説明。
「じゃあ、マティアさんの同僚か。仲良いの?」
ククルが聞くと
「人間の女に興味はない」
堂々した答えが返ってきた。
「本当、相変わらずだな……仕方ねぇんだが」
溜息をついたロスに
「昔、何かあったんですの?」
セノーテが聞いた。
「……兄貴は、女好きでな。まあ、義理姉さんは、セトが小さい頃に出て行った」
それ以来、火竜のアルドルが母親の代わりをしていたこともあり
「見ての通り、のドラゴンマニアになってしまった」
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王立アカデミー・校長室
「まったくアナタがたは……」
溜息をつくコアトリクエ。
「まあ、やるとは思っていたが……こうもあっさりとは」
苦笑いするグランに
「兄様、知っていらしたのなら……私とククルを捜索に協力させてください」
「そーだ、そーだ」
セノーテはとククルは意見。
「……コアトリクエ校長、例の情報を二人にも」
「ええ」
グランの言葉に、コアトリクエが頷く。
「セト殿には、二重楽器の適性があります」