ネブラ雪山へ
白銀の都市メルルカ
三方を山で囲まれ、この時期はスキーをする観光客が多い。
「お待ちしていました」
ステラの父、クロスフォード子爵が頭を下げる。
雪崩が起きたのは、南のネブラ雪山。
調査に向かった所、山頂の方は雪が深く進むことが出来ない状態。
「やはり、 ステラも……?」
マティアの言葉に
「ええ、雪洞に興味を持っていた若い青年を案内していたのですが」
クロスフォードはククルが付けている羽飾りを見て
「ちょうど、彼と同じような羽飾りを付けていました」
「え、オレと同じ……」
何か考えるように、眉を寄せたククル。
「……貴様の親戚か?」
アズールが訪ねると
「どうだろ、ケツァルコアトル族は鳥籠から出たがらないし」
でも、雪洞に興味持ってたと言うのは気になる。
「では、我々はこれからウェルテクスに乗って山頂に向かいます」
クロスフォード子爵に用意してもらった厚手のコートを纏い、三人はウェルテクスに乗って山頂に向う。
✳︎✳︎✳︎
「ステラお姉ちゃん、怖いよ」
「ボクたち、どうなるの?」
泣いている女の子と男の子をだきしめ
「大丈夫、もうすぐ助けが来ますから」
ステラが励ます。
「……近いな」
雪洞の奥へ向かおうとする眼鏡の青年。
「あの、奥は危険ですよぉ。ここで一緒に待ちましょう」
「もともと、僕はここまで案内してもらえば十分だった」
「……あ、待って」
ステラが止めるのも聞かず、青年は行ってしまった。
(最初は、何だかククル君と似てると思ったけど……)
性格はまるで違う。
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「君は、ウェルテクスの回復を」
「了解」
力を使い披露しているウェルテクスに、ククルはバイオリンで青の音を奏でる。
「すいません、殿下。力仕事を……」
「このくらい、平気だ」
雪洞を塞いでいる雪を、スコップを使い二人で慎重に取り除いていく。
差し込まれた微かな光を見て
「あ、ステラお姉ちゃん!」
「ええ、助けが来ましたよぉ。マティア様、ありがとうございますぅ」
それにアズール様とククル君も、とステラが言う。
「アズール、オマケ扱いだな」
フハハハハ、と笑うククルに
「貴様もな」
アズールは、呆れ顔。
「確か、青年も一緒と聞いて居たが。ひょっとして、怪我を?」
「ううん、お兄さん一人で奥に行っちゃった」
「ステラお姉の言うこと、聞かないんだもん」
子供たちが、口々に言う。
「放っておく訳にもいかないだろう」
「マティア殿、ここは冷えます。ステラ先輩と、子供たちはウェルテクスで地上に下ろした方が」
アズールの意見に
「そうだな。ステラ、外に居るウェルテクスに事情を説明してくれ」
私たちは、これから雪洞の奥に向かった青年の後を追う、とマティア。
「分かりましたぁ。気をつけてくださいねぇ」




