新たな任務
神獣討伐の任務を終えたマティアは、グラン殿下の執務室に呼び出された。
「雪崩ですか……」
「ああ、近くに居た民間人と王立アカデミーの生徒が巻き込まれている。雪洞の中に避難しているようだが、あの辺りに神獣の姿も確認されている」
机の上で腕を組み、グランが状況を説明。
(確か、メルルカはステラのお父上クロスフォード子爵の領地だったな)
マティアは頷くと
「では、急いで向かいます。今回、同行する竜奏医師は?」
「……実は、冬休み中で暇を持て余している奴等がいるんだが」
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「アズール殿下と………君か」
なんだか、子守を任された気分だ。
ククルを見て眉を寄せたマティアを見て
「なんだよ、その態度の違い」
喚くククルと
「よろしくお願いします」
頭を下げるアズール。
「いや、君との出会いは、その何と言うか。色々あったからな」
苦笑いするマティアを前に
「フハハハハ、オレが竜奏医師として、同行するんだ。大船に乗ったつもりでいいぞ」
腰に手を当てて、ククルが言った。
「泥舟の間違いだろ。まさか、ケツァルコアトル族だったとは驚いたが」
竜舎から出てきたウェルテクスが言う。
「元気そうだな。会うのは随分、久しぶりだ」
アズールが声を掛けると、ウェルテクスが会釈をする。
「お久しぶりです、殿下。その右手は、どうされました?」
「ああ、猫に噛まれた」
たいしたことはない、と少し嬉しそうにアズールが言う。
「あのクソ猫に噛まれて、嬉しいとか……お前、ドM?」
「貴様は、さっきからうるさい」
「なんだとー」
言い合っている二人を横目に、マティアは溜息をつく。
「これから、メルルカへ向かいます」
ネブラ雪山の雪崩の影響で、雪洞に閉じ込められた人たちを助ける、と二人に説明。
「ウェルテクス、今日こそ背中に乗せろ」
ちゃんと練習した、と言うククルに
「ほう、どんな竜に乗った?」
ウェルテクスが聞くと
「アズールの竜装に」
それを聞いたマティアとウェルテクスは、顔を見合わせる。
(な、なんて、畏れ多い……)
アズールは頬を掻くと
「あ、いや、ククルに竜装の修行に付き合ってもらっていますので」
近くで音を聞くと調子がいいので、背中に乗せたとアズールが事情を説明。
(しかし、最近……発作が起きなくなったな)
ククルが言うに「竜装を上手く使おうと、修行した副作用」らしい。
三人は、ウェルテクスに乗って竜都北西に位置するメルルカに向かった。




