戦友
ランプの灯りに照らされたのは、専用のケースに保管された大量の楽器。
その光景は、まるで楽器の墓場のようにも見えた。
「なんだか、不気味ですわね……」
セノーテが言うと
「ここは、コアトリクエ校長の戦友たちが使っていた楽器の保管庫だ」
ロスが説明をする。
かつて、テスカポリトカが神獣を率いて世界を作り直そうとした時、竜王フナブ・クー率いる竜族にケツァルコアトル族と人間の竜奏医師が付き従い、戦った。
竜族たちは勝利したものの、払った犠牲は大きいものだった。
それを、地下迷宮に安置された楽器の数が物語っている。
「……ここは、寂しい所ですわね」
「父上は、竜族だから長命だと分かるんですが……コアトリクエ校長は、若いですよね」
とても同年代にはみえない、とアズール。
ロイは目を見開くと
「なんだ小僧から聞いてないのか?」
さきほどから口数の少ないククルは、顔を顰める。
「コアトリクエ校長は、ケツァルコアトル族だ」
「それって……」
「こいつの同族?」
セノーテとアズールの視線が、同時にククルに向けられる。
「でも、お父様の話だとケツァルコアトル族はテスカポリトカに保護されていると聞いてましたわ」
ククルは溜息をつくと
「あの人は、テスカポリトカの申し出を断ったんだ。だから、罰をうけてる」
対戦の後、傷ついたケツァルコアトル族に手を差し伸べたのはテスカポリトカ。
彼は、ケツァルコアトル族たちに鳥籠で音を奏でるようにと言った。
しかし、コアトリクエは
「アナタのためだけに、音を奏でることはできません」
テスカポリトカの誘いを断った。
それは、テスカポリトカの怒りに触れた。
「コアトリクエ校長の両目は、その時に……失われている」
竜に捧げる音を弾くためには、エーテルが必要となる。
両目を失ったことで、エーテルは常に抜け続けているような状態。
そにため、二重楽器を奏でることが出来ない。
「ケツァルコアトル族は、竜と同じく長命だけどコアトリクエ校長は常に弱って行ってるんだ」




