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ドラゴン・ドクター  作者: 西谷東
プロローグ
2/74

黒の楽譜を探す少年2

「それでは、失礼します」


ククルを連れて行こうとした男に


「待て……やはり、納得できないな」


マティアは声を掛け、足止めをする。


そして、ククルの左手を掴むと


「走るぞ!」


一気に駆け抜ける。


「え、ちょ……マティアさん!?」


「お節介かと思ったがな……元気のない子供を、放ってはおけないだろう」


「……あ」


町の外へ出てウェルテクスとステラに合流する、と言ったマティアの前に


「止まれ、竜騎士」


「この町の人間、全てが人質だ」


正気の感じない人々から、代わる代わる発せられる卑しい声。


影が蠢き、鋭いナイフのような形を取る。


腰に括っている剣を抜き


「さっきの男か?」


マティアは、構える。


買い物中の女性は、不敵な笑みを浮かべ


「そう警戒するな。ククル様を渡せば、大人しく退散しよう」


実態のない影は、告げる。


「親の元に帰る子供が、こんな悲しい顔をするのか?」


マティアの問いに


「全ては黒の断片を弾いた、ククル様の責任だ」


彼は、それなりの罰を受けなければならない、と影は告げる。


(……どうする?)


マティアが迷っていると


ポツポツ、と空から水滴が零れる。


「雨か?」


ククルが空を見上げると


「マティア様、助けにきましたよー」


翠色の竜ーーウェルテクスに乗ったステラが手を振る。


「やれやれ、天候を操作するのはあまり得意ではないんだが」


愚痴を言う、ウェルテクス。


徐々に雨雲が、日光を遮り、大量の雨粒が地上へと降り注ぐ。


「参ったな……これでは、宿主の体に留まれない」


影は蠢き、地面に染み込んだ水に溶けるように消えた。


人質に取られた人々も


「あら、どうしてこんなところに?」


「仕事、仕事」


元に戻っている。


「すまない、助かった」


マティアが礼を言うと


「町の方に不穏な空気を感じた……しかし、また消耗したな」


地面に伏せる、ウェルテクス。


「ステラ、青は弾けそうか?」


「私のエーテルも、そろそろ限界ですー」


ふぅ、と一息ついたステラには疲労の色。


「オレが、白を弾く」


助けてもらった礼もある、とククルが言う。


「え、白? キミが?」


目を丸くするマティアを前に


「……なんだよ、その顔」


そう言って、ククルはバイオリンを奏でる。


穏やかで、幻想的な曲が響く。


「すごいですねー」


私とあまり歳も変わらないのに、とステラは瞳を大きく見開く。


「……これは、見事な白だな」


ウェルテクスは、素直に褒める。


「ふふふ、ようやくオレの凄さがわかったようだな」


腰に手を当て、ククルが偉そうに言う。


その様子を横目に


「ウェルテクス、黒の楽譜について何か知っているか?」


マティアが尋ねる。


「マティア、その話……誰から聞いた?」


ウェルテクスの声が、低く鋭くなる。


「それは、ククルから「うわああ、今のナシ。ノーカウントでお願いします」


マティアの声を、ククルが大声でかき消した。


「竜に言うとか、マティアさんは馬鹿なんですか!?」


「急に、何だ?」


ウェルテクスは深いため息をつくと


「黒の楽譜は、不死の竜を殺せる代物だ」


そもそも、人間が弾けるモノではない、と続けた。


















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