プロローグ
金髪の軽くウェーブのかかった腰まで伸びる長髪に、透き通る青い瞳。背中に純白の翼が生えている少女、ルカは光の中に居た。
光は優しく包み込むかのように、ルカを照らしている。
ルカは一歩、また一歩と、ゆっくり光の中を歩き出した。ただぼんやり、ゆっくりと。
光の中で女性を見つけた。
黄金の翼を持っているが、その翼は何故か右にしか付いていない。金色の美しい、ルカと同じように軽くウェーブのかかった髪を腰まで伸ばしている。
ルカを見つめるセピアの瞳は、濁りなく、とても澄んでいた。
「もうすぐ、世界が滅びます。天使の世界も、悪魔の世界も。それを止めれられるのは、貴女と、もう一人の悪魔の方だけです。旅に出て、たくさんの世界を見て下さい。そして、世界崩壊を食い止める術を探し出して下さい。貴女達ならきっと止めらます。少なくとも、私は信じています」
微笑み、透き通るような優しい声でルカに言った。
「貴女に、特別な力を与えます。それは癒しの力。この力で傷ついた人々を救って下さい。但し、力を使うには貴女自身の生命力を使います。力を使う時はしっかりと考え、自分の事を大切にして下さい。それと、光の宝玉を授けます。これは呪いを解く為の道具。きっと誰かが必要とします」
女性はしっかりとした視線でルカを見つめた。
手の平に光を集め、ガラス玉のように固めた物をルカに手渡した。
「さぁ、目覚めて下さい。そしてまず探して下さい。悪魔の方を。彼は今、悪魔の王以外誰も信じられない状態です。貴女ならきっとどうにか出来ます。・・・・・・私は貴女達が困った時に必ずまた現れます。どうか、世界を救って下さい。自分を信じて、周りの人達を信じて―――」
女性は、光となって消え始めた。
消える前、初めてルカが喋った。と言うより、ルカはそれまで声を出す事が出来なかった。
「待って下さい! 貴女の名前は!?」
「・・・・・・ウルーラ。女神ウルーラです。それと、悪魔の方の名はグル。覚えておいて下さい」
言い残すと、ウルーラは完全に姿を消した。
そしてルカの意識は急速に現実へ引き戻された―――