スパイドロップ(羊の企画を阻止しろ!)
とある学校に一人の女子高生がいた。
長くて黒い髪、くりっとした茶色い目、細いいでたちをした女子高校生…。
その名は!
「ドロップで~~~す!!」
表では、学校生活を楽しく過ごし普通の日常を送っている。
しかし、裏にはもう一つの顔があった。
それは…。
「悪を倒し、正義を貫きながら極秘任務をこなす優秀なスパイなのだ~!」
ただし、優秀というのは彼女の自称である。(ひどいよぉ
そんな彼女に一つの任務が与えられた。
ドロップは家に帰ると地下にあるスパイ本部へと向かった。
そこに師匠であるデイジーが今か今かと待ち構えていた。
「デイジー師匠、任務ってなんですかぁ?」
ドロップは、デイジーにまるで友達かのように手を振りながら声をかけた。
「ドロップ…私は師匠なんだぞ?
もっと私のシャキッとしたまえ!
それになんだ、その口調は?」
デイジーは、怒りを露にしながらドロップに歩み寄った。
「うっ…。」
ドロップは、怖気づいてジリジリと後ろに下がった。
「まぁいい…。」
デイジーは、近づくのをやめた。
ドロップはホッと胸をなでおろした。
「今回の任務はこれだ。」
スクリーンに映し出されたのは…羊!
「羊さんだぁ…かわいい♪」
ドロップは、羊のかわいさにうっとりした。
「こいつはただの羊ではない、極悪な羊だ。」
「極悪には見えないよぉ?」
「この羊は、恐ろしい計画を考えている。」
「どんな計画?」
「それは…。」
「それは?」
ドロップは、思わずゴクリと唾を飲み込み咳き込んでしまった。
「全生物を羊にしようとしている!!」
「え、どういうこと?」
「つまり、地球上のすべての生物を羊にしようとしているのだ!!
一刻も早く阻止しなければ経済や環境問題に大きな支障が出てしまうことに…。」
デイジーは、ううむと唸りながら頭を抱え込んだ。
「いいじゃん。」
「へ?」
予想を超えたドロップの返答にデイジーは頭が真っ白になった。
「だって全部羊さんになるんでしょ?
かわいいじゃん。」
「いや、そう言ってるがお前も羊になるんだぞ?」
「それはやだ!」
デイジーは安堵した。
「では、これより対策会議を行うため人員を徴収する。
それまで待機!」
「はぁい♪」
一方その頃、羊率いる軍団では不穏な動きがでていた。
「羊様、用意が整いました。」
「うむ、ご苦労。」
羊を模ったマスクを被り、黒のマントを羽織った一人の男が低い声で秘書に言った。
男は、これからやろうとしていることに胸を躍らせていた。
(これから私の世界が広がるのだ…早く見たいものだ。)
そう思いながら壇上へと上がっていく。
壇上の前では同様に羊のマスクを被った者達が壇上に上がった男を見て、歓声と拍手を浴びせた。
「羊様~早く我々の世界を見せてください!」
「早く見たいのに見れなくて私は、眠れないのです!」
そう叫びながら観客達は、羊!羊!とコールし始める。
男がサッと腕を上げるとピタッと拍手と歓声が止んだ。
「皆の者、よくぞ集まってくれた。
今宵、我々の目的がついに果たされようとしている!
」
おお~っと歓声と拍手があちこちから湧き上がった。
「これが羊になる光線銃だ。
これを撃たれた物体・生物はすべて羊になる。」
そこに、どうせおもちゃなんだろと呟いた声が静かな会場で響き渡った。
羊は、そいつを睨みつけるなり叫んだ。
「お前、ちょっとこい実験台になるがいい!!」
男は、すくみあがったが全員からの冷たい視線から逃げることができずオドオドと羊がいる壇上の前へと上がった。
「覚悟はできてんだろうな?」
「・・・。」
男は震えたまま声ひとつ出そうとしない。
「羊光線くらえ!」
光線銃から放たれた光が男のカラダを包み込んだ。
すると、みるみる体が太っていき、白い毛が生え、頭からは角が突起し、四つんばでないと動けない状態になった。
「メェ~!(助けて)」
男は、1匹の羊になった。
「これが羊銃の威力だ、わかったかね諸君?
これで全世界を羊にしようぞ~!」
羊が叫ぶと羊コールが轟いた。
「一刻も早くあいつをなんとかしないと・・・。
おい、ドロップ慎重に行くぞ!」
とデイジーーが叫んだが隣にはドロップの姿はなかった。
「ドロップ、どこいった!?」
デイジーがあたりを見回したがどこにもいない。
その時、羊の怒鳴り声が聞こえた。
「おい、お前そこでなにしている!」
「あなたのその変な企画をぶっ壊しに来たのよ!」
「なに~!
貴様、私の企画のどこがいけないんだ?」
「人類を羊にしたらどうなると思ってるの?
経済に食糧難もあるしいいことなんか何もないわ!」
「そんなことない。
全員が羊になれば癒しが豊富でストレスだってなくなる。
愉快ではないか!
そして私は、羊界のリーダーになるのだ!
素晴らしい!」
その時、会場の一番後ろで大きな声がした。
「私は、羊が大っ嫌いだ~~!!」
声の主はデイジーだった。
「私は、羊恐怖症で羊が大っ嫌いなんだ・・・。」
「えっ、師匠羊嫌いだったんだ・・・。」
「おまえええええ、羊が嫌いとか許さんぞ・・・。
お前を羊にしてやる、くらえ!」
羊は、デイジーに光線銃を構えた。
「やめなさい!」
ドロップは、羊から光線銃を奪い取った。
「あなた、そんなに羊が好きならあんたが羊になりなさい!」
そう言って光線銃を羊に構え発射した。
「ぎゃあああああ!!」
羊は叫びながら羊へと変貌を遂げていき・・・
「メェ~~!(こら~~~!)
メェメェ!(元に戻せ!)」
「何言ってんのかわかんない・・・。
そんなに羊と戯れたいならスゥエーデンとかニュージーランドに行きなさい!
師匠、小型輸送機用意して!」
「何する気だ・・・?」
「いい考えがあるの♪」
ドロップは、羊を檻の中に入れて輸送機へと運び込んだ。
「行先どこにしようかしら・・・。」
「考えてなかったのかよ・・・おい・・・。」
デイジーの言葉をスルーしながらドロップはエンジンをかけた。
着いたのはなんと、動物園だった。
「え、お前外国言ってなかったか?w」
「そうなんだけど、ここの方が見張れるしいいかなぁってw」
「それはわかるがいくらなんでも羊が・・・。」
「メェ・・・(これはひどい・・・)」
「声が意気消沈してやがるwww」
「いいじゃん、ここで!
人に弄ばれながら羊界のリーダーになりなさい、ここのね・・・。」
「ドロップの方がよっぽど悪人に見えるのは気のせいだろうか・・・?」
「メェメェ・・・(あってると思う・・・)」
「決まりね!」
「決めんなよw」
こうして羊は、動物園で人間にベタベタ触られつつも動物園内の羊界のリーダーになるために奮闘する日々を送るのであった。
「でめたしでめたし♪」
「羊~頑張れ~!」
「・・・メェ(・・・あぁ)」
完