忠告
会長のところを副会長にしました。二年になりたてなのにさすがにおかしいとようやく気づきました(´Д` )
「じゃあ三人とも同じクラスなんだねー」
「はい、そうなんです!」
会話は主に芳佳と日出野先輩が中心になって話していた。私は話しかけられてもそうですね、とかへー、とかそういう返事しかできないのでいまいち盛り上がりに欠けるので、話したそうにしていた芳佳にさりげなく譲った。
たまにこっちに話を振られると適当にそうだよ、とかんー、とかでごまかしていた。別にめんどくさいわけじゃないけどどう答えていいかわからない質問ばっかだったし、正直芳佳はこっちと話すより先輩と話すのが楽しいらしく申し訳程度にこちらにも話題を降っていただけだった。
「そういえばさあ、けいのこと知ってたみたいだけどやっぱ一年生のあいだでも話題になってるの?」
「そりゃあもう!入学式のときからすっごい話題でしたよ!」
話題はいつの間にかお兄ちゃんの話になっていた。
「すっごいかっこいい先輩が副会長ででてきて、もうほんとやばかったんですよー」
本人の前でそう言える芳佳がすごいと真剣に思った。その『すっごいかっこいい先輩』であるお兄ちゃんは紺衣に捕まっていた。
「って、紺衣ずるいよー!私も先輩と話ししたい!」
自分の欲望に素直な芳佳は日出野先輩を放ってお兄ちゃんの方にいった。ひとりでも大変そうに会話していたお兄ちゃんは二人に増えて眉間の皺が余計に増えた気がした。
「いやー、妹ちゃんの友だちって意外とアグレッシブなんだね」
しみじみ、といった感じで先輩はいった。
「すみません、ご迷惑でしたか?」
なんだか申し訳なくなって謝ってしまった。そういうと日出野先輩はふふふ、って笑って私の頭に手をおき、優しく撫でてくれた。
「んーん、気にしてないよ!元気なのはいーことだし。でもああいう女の子が多いとけいは今年も苦労しそうだなって」
頭を撫でられて恥ずかしいしびっくりしていた私は先輩の話にうまく反応できなかった。
「え、あ!」
その驚きをどう受け取ったのはわからないけど先輩は慌てたように頭から手をどけた。
顔が、暑い。顔が真っ赤になっているだろうから思わずうつむいてしまった。お父さん以外の人に頭を撫でられたのは初めてで、どう反応していいのかわからなくて言葉が見つからなかった。
「ご、ごめん別に他意はなくてね!なんていうか、こう、そう!い、妹がいたらこんな感じにするかなって思って!ほんと!下心ないから!」
わー!っていいながら先輩は謝っていた。私はそれになんとか反応しながら話を続けた。
「き、気にしないでください。ちょっと動揺しただけっていうか…えっと、そんなことより…あ、兄は去年も苦労したんですか?」
私が強引に話を戻したら先輩は咳払いをしつつ乗ってくれた。
「ん、そうだね。去年っていうか、いつもかな?俺あいつと中学から友達なんだけど、毎年毎年女の子から言い寄られててさー。あいつもさあ適当にあしらえばいいのに性格なのかしらないけど律儀に応対するんだよね。それで余計女の子が舞い上がっちゃってさ。今じゃ親衛隊も作られてるって話なんだよね」
「そ、それはすごいですね…」
聞きながら若干引いた。たかだか高校生に親衛隊?ちょっとそれは…
「妹ちゃんも気をつけてね。二人が兄妹ってこと、まだあんまり知られていないだろうし。これからは大々的に兄妹だってこと言っといたほうがいいよ。面倒事に巻き込まれる前にね」
私の目を見ながら先輩は忠告した。私は今の状況よりも言われたことに驚いていた。なぜ、気をつけなければいけないのだろうか。そんなに大変な人に好かれているのだろうかと、先にいっているお兄ちゃんの背中を見ながら思っていた。
けいしはよしかみたいなミーハーな人よりこのえのような虎視眈々と彼女ポジションを狙ってくる人のほうが苦手です。