友達
降ってふいた疑問だったが、特に気にせずそのまま家に帰った。その後、日出野先輩に遭遇することもなくあいも変わらずお兄ちゃんと登校していた。ただ、帰りはお兄ちゃんが生徒会役員なので、バラバラだけども。生徒会はほぼではないけどもよく話し合うらしくお兄ちゃんに帰りは送れないと、通常授業が本格的に始まったとき言われた。
そして入学から何週間かたち、部活勧誘の時期になった。
「しーはどこの部活入るか決めてる?」
そう聞いてきたのは飯見芳佳だった。初めて会ったのは入学式。クラスを探していた私はその子の隣にいて、何気なく私がクラス名をつぶやいた時に話しかけてくれた子だ。私よりも短い髪の毛で、見た目からして運動してますっ!、というオーラが漂っている。とても話しやすい子で私が返事を返すのをちゃんと待ってくれる子。自分から呼び捨てでお願い、と初対面のときに言われたけど人を呼び捨てするのに慣れていなくていつも呼ぶとき照れくさく感じている。
ちなみはしーっていうのは私のあだ名、らしい。安直だけどわかりやすいといえばそうなんだけども…
「んー…まだ決めてないよ?」
眉間を人差し指で抑え、目をぎゅっと瞑って、考え中をアピールする。すると横からクスクスと笑い声が聞こえた。
「しー、それほんとに考えてるの?こどもみたいだよ」
そういうのは三戸紺衣という少女である。大和撫子を彷彿とさせるその姿はまさに美少女といって過言がない。腰まであろうかという豊かな黒髪に私はとても憧れている。この子は入学式のあと、クラスに移動するときに勇気を出して話しかけたのだ。高校から変わろうと思って頑張ってやってみたのだが、その時の自分をとても褒めたい。紺衣はとてもいい子で私がつっかえながらも一生懸命話し終えるのをちゃんと聞いてくれた子だ。この子も話しかけた時から、呼び捨てでいいよって言ってくれた子だった。なんだか、対等に感じられてとても呼ぶたびに照れくさくも嬉しい気持ちにさせてくれる。
「こどもじゃないしっ。紺衣と芳佳はもう決まったの?」
もちろん、と二人が言った。芳佳は幼い頃から続けているバスケを続けるらしく、バスケットボール部、紺衣は細々としたものを作るのが趣味らしく手芸部らしい。芳佳はなんとなくわかっていたけど、紺衣は中学のときやっていた吹奏楽部を続けるのかと思って少しびっくりした。
「なんも決まってないの私だけ?」
ちょっと寂しそうに唇を尖らせながら言った私。その顔をみてふたりは笑った。
「部活見学なら付き合ってあげるよ!まだ仮入部期間だし、まだ考えてみようかなって思ってるし!」
「芳佳、慰めならいらないー」
「ほんとだって!じゃあ今日早速いこ!どこから見る?」
見た目通り素早い行動でおいてけぼりを喰らう私。ついていけずにただひたすらに困った顔をしていた。。
「芳佳、そんなに急いで見に行かなくてもいいじゃない?今日は三人でどっかこの辺歩いてみようって話だったし」
そんな私を見かねたのか、紺衣が助け舟を出してくれた。やっぱり優しい子だな。
高校に入って私は少し人に意見が言えるようになった、といってもこの二人が私の話しをちゃんと聞いてくれるからだけども。まだあってそんなたってはいないのだけど、そのことがとても嬉しかった。
別に誰かが変わったわけじゃない、新しい環境になったから新しい気持ちになったのだ。ただそのことがとても重要なんだなと実感した日だった。