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見つめる先  作者: しゅか
3/17

出会い

 私の答えに満足したのかわからないけど、その子はふうんと言うと元いたグループのところに戻っていった。ほんとに、なんなのだろう。


 その後、ほかの子に話しかけられ、なんとか会話をやりきっていると担任の先生が入ってきて私は人知れず息をついた。高校っていうものは中学とやっぱり違うなあ、と入学式から感じていることを再度思った。


 まだ本格的な授業は始まらず、今日のところは自己紹介と教科書の配布、そしてこの学校についてを教えてもらい、解散になった。


 教科書を全て配られたので一旦家に持ち帰り、名前を書かなくてはいけない。欠かない人もいるけれど、私は他人のものを間違えて持って帰りたくはなかったので全てに名前を書く事にしている。


 重たいなあ、と思いながらもこれからのことであるし、個人的には大切なことだから仕方ないと割り切ってたっぷりと教科書がはいったカバンを持ち上げた。


 …重い


 思わずつきそうになった溜息を噛み殺し、勢いよくカバンを持ち上げた。そうすればなんとか持てるし、ほかのみんなも重たい思いをしながら持って帰っていたのだ。我慢も出来る。


 とっくにクラスの人たちは帰っていた。私はなんとなくみんなと一緒に帰る気がしなくて、適当に理由をつけてクラスに残っていた。一人に、なりたかったのだ。


 新しい学校、新しいクラス、新しい…家族。実を言うと、まだ馴染めていなかった。自分を取り巻く環境が急激に変わったことで、疲れてしまっていたのだ。少しだけでもいいからどこかで休みたい。欲を言えば、誰かに相談、いや愚痴りたかったのだ。


 高校に入ってから、同じ中学の友達はほとんど会わなくなった。卒業式の時にあんなに泣いて寂しいと、高校になってからもずっと一緒だからねといっていたのに。春休みのあいだに何回か遊びの連絡がきていた。ただ引越しや新しい家族との接し方で大変だったので一回も私は遊びに行かなかった。そうしたら毎日のようにきていた連絡が高校に入ってからぱったりとやんだのだ。あちらも高校の準備で忙しいのだろう、そう思うのになんだか連絡が来なくなったことで縁が切れたかのように感じた。


 そんなことを思うくらいには、まいっていた。私が忙しかったのを知っていたから、連絡をあまりよこさなかったのに。自分でも、連絡しても返せるかわからないと返事していたのに。馬鹿だなあ。そんなことを窓を見つめながら思っていた。


 その時だった、扉が開いて、呼びかけられたのは。


 最初は私をよんでいるとは思わなかった。だから無視していたのだが、私のことを呼んでいると気がついたのは肩を叩かれたからだ。


「おい」


「っ!?」


 ばっと振り返ると、そこには圭史お兄ちゃんと私の知らない男子生徒が立っていた。誰なのかと見つめているとその人が私に話しかけてきた。


「あー、この子が噂の子なのねー。けい、良かったじゃん。妹さんが可愛い子で!」


 お兄ちゃんをけい、と呼んだ。そのことにびっくりしてお兄ちゃんを見ると少し眉間に皺を寄せてかず、と呼んだ。するとその人はああ、と何か納得したような顔をして、ニコニコしながらこちらを向いた。


「あ、ごめんね。自己紹介がまだだった。俺、日出野和沙ひでのかずさっていいます。えーっと、君の一個上で先輩になるねー。趣味は…んー、小説を読むことかなー。部活は剣道部であとは…」


「和沙、それくらいにしろ」


 お兄ちゃんがしわを寄せたまま言った。そして日出野先輩はしゃべるのをやめ、お兄ちゃんの言葉の続きを待っていた。


「すまない、こいつはしゃべりだすと止まらないんだ。んで、なんでお前はここにいたんだ?新入生はもうとっくに解散だっただろ」


 ちらりと、机の上に置かれた荷物を見ながら言われた。そりゃそうか、特に約束があったわけでもないのにひとりでいるなんて不思議だよね。

かずさはほっとくと延々と喋っていられる系男子。逆に圭史はほっとくと延々と黙っている系男子。どっちも厄介ですねー

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