執務だけの王太子妃?そんなの、願っていませんわ!なので、婚約破棄しますの。
時はユーグリーク歴487年
「お前…セリーヌは婚約破棄したいところだが、義妹を正室にしてやるから、側室になれ。だが、表の役職は王太子妃......いや、未来の王妃だ!」
義妹のエリーが可愛いことはわかっているわ!
私は霞んだ銀髪でエリーは輝く金髪ですし、ありきたりな緑の瞳に対して、エリーは綺麗なピンクの瞳なんですもの。
でも、でも、
「王太子殿下…いえ、ユリウス貴方は何が言いたいの?お世継ぎは…?」
あ、思わず言ってしまったわ!
「セリーヌ…つまりは、俺は優しいから婚約破棄はせず実務と外交などは王妃として、それ以外はエリーを王妃にすえると言うことだ。まぁ、エリーの肩書は側室だがな。世継ぎは、エリーとの子でセリーヌとの子には継承権を与えない」
「つまり、貴方様は私に政務と王妃の職を任せ、それ以外はエリーと一緒にいるのと?そして、継承権が私のできるかもしれない子供にはないと?」
しまったわ!ここは王妃教育で培った笑みよ!
「そうだ」
はい?この人は何を考えているのかしら?
「都合がよさすぎませんこと?」
うんうん......どうすればいいのよ!
私は都合のいい物ではないわ!
「いったい何をしたというの?」
本当にそうよ!
「セリーヌ......そなたは、エリーの服を切り裂き屋敷の外に放り出したというではないか!本当に、その自覚がないとは......この悪女め!」
悪女ですって?
私は全くの冤罪ですのに!
だいたい、そんなことをしてきたのは継母の方よ!
ん~っとでも、反論しても無駄かぁ。
労力使うだけだもの。
「失望しましたわ......ユリウス。あなたとの婚約なんてこちらから願い下げですの」
「あぁ......俺もだ」
......エリーそんな笑みをなさらないでくださいな。
全く、虫唾が走る。
この国も終わりね。
両親は私でも義妹エリーどちらでもいいのよ。
王妃になるのは。
まぁ、建国以前から続く忠臣であり名門クローゼン公爵家に生まれたのが運の尽きね。
「ところで、国王陛下はご存じでいらっしゃるのかしら?」
これだけは、聞いておきたいわ。
実の父のように接してくださいましたし、王妃様もはやくに母を亡くした私に実母のようにかわいがってくださいましたからね......
「知らない!だが、必ず父上と母上ならわかってくださる!」
この自信はどこからきているのかしら?
ユリウス......昔は仲が良かったのに、もうはるか昔のようね。
私も、覚悟を決めましたの。
「では、少々付き合っていただけますか?エリーも一緒でかませんの。」
神殿に......王宮の、戸籍管理部を訪ねなくては。
こんな、人と結婚だなんてお先真っ暗よ。
戸籍管理部の責任者のライアンはこの話を聞いたら白目をむくでしょうね。
気の毒よね......まだ、二十代半ばなのにそんな役職になってしまって。
執務をしていたころ、お世話になったものよ......懐かしいわ。
ライアンは補佐官だものね!
「なにを笑っている!行きたいところがあるのだろう?」
あら......私笑っていましたの?
ライアンが私の補佐官時代だった頃の話を振り返っていただけなのに......
「失礼いたしましたわ。神殿と戸籍管理部の方に......貴方様の要件を飲むにしても、エリーと籍を入れなくては、何もできませんわ」
どうかしら?とっても正論だから、納得してくれると思うのだけれど......
「よかろう」
やったわ!
今とってもガッツポーズをしたいのに、やってしまったら品格を損なうもの。
無理よねぇ......でも、この立場から解放されたら、出来るわね!
◇◇◇◇
「すみませんが、ユリウス殿下の婚約者にエリーも加えていただけませんか?」
ライアン......ごめんなさいね。
少し利用(?)させてもらうわ!貴方の、性格を......
「かしこまりました。セリーヌ様......・・・・・・・・・・」
ライアンなら、そう来ると思ったわよ!
「ねぇ、殿下にエリー......手続きをいたしますけれど」
「好きにしろ」
「おね~さま、何とかしといて!」
やっぱり......無関心だわ。
これなら......!
好機よ!セリーヌ!
「さっすが、ライアンね!手続きが早いわ。殿下との婚約を解消する・・・予定は......つもりはないのだけれど、エリーを婚約者に加えてほしいの」
さぁ、ライアン......この「予定は」という言葉に違和感を持ちなさい。
じゃないと、話についてけないわよ?
「なるほど......書類作成にあたり、詳細な理由をお伺いしたいのですが……」
ライアンはそう来るわよね。
超几帳面で細かい性格を考えれば......
「実は、王妃は私で側室はエリーなのよ。政務全般は私が担当する予定ですわ」
これで、気が付くかしら?
正義感と責任感が強いライアンならどういう返しをするのかしら……
「ほぅ~......そうなのですね。陛下はご存じでしょうか?」
なるほど......ね。
「えぇ......殿下が」
曖昧にしてしまおうかしら。
「かしこまりました。少々お待ちください」
うっわ~想像以上ね。
顔が引きつっているし、声のトーンが恐ろしく低いわ。
でも、ちょっと時と場合を考えてほしいわね。
あの二人は......いちゃいちゃしすぎよ。
「お待たせいたしました」
あれ?想像以上に早かったわね。
「とりあえず、5種類ありますので......ご確認をお願いします。いらないものはお預かりいたします」
5種類もいるかしら?
本人のサインだけの話だと思うのだけれど......
◆◆◆
婚約届
理由明細書
婚約解消届
婚約許可証
契約証
◆◆◆
わぁ……さすがライアン。
よく私の意図が分かったわね!
婚約届はあの二人のサインね。
ん?これは何かしら……わからないわ!聞いてみましょう。
「理由明細書ってなにかしら?」
「本妻や婚約者がすでにいる場合、なぜ婚約するとかという理由を書かなければいけないのです」
なるほど!どうしましょうか……
「こう書いてくれないかしら?『私が王妃になり政務全般を請け負う代わりに、私生活では妹を王妃の立場にしたいから』と。これは、全員が合意の上よ」
「……か、かしこまりました……ご命令とあらば、そう記載いたします。でしたら、契約書はいりませんね。詳細を書くだけですから!こちらの紙とこちらにも署名をお願いいたします」
なにかしら?この2枚は......ってライアン!
「婚約解消届」「婚約許可証」この2つじゃないの……
全く、あなたも策士ねぇ~
でも、私の気持ちをよくわかっているわ!
「あ……こちらには陛下の印をばっちり押してあります。裏に......」
裏?
あら......紙をめくったら綺麗に押されているじゃないの。王印が!
「こちらどうぞ」
これは、手紙?
王印があるから、陛下かしら?
なにが書いてあるのかしら......
◆◆◆
セリーヌ......話はライアンより聞いた。
なんでも、別の婚約者を連れてきたとか......
最近愚息の行動がおかしいと思い、使用人を送ったのだ。
この件を私も王妃も、知っていたのだが......
はっきり言って、どう対応すべきか迷っていた......本当にすまぬ。
これは、対応が遅れた我々の落ち度でもある。
あんな、愚息のもとにいて幸せになれるわけがない。
実家は厳しいだろうから、家と資金を渡すから.....その、追い出す形になってしまい申し訳ない。
だが、愚息と一緒にいさせるとあいつが、なにをするかわからないのだ。
同盟国のゴーンウィックに使いを出した。
知らぬかもしれぬが、あそこはセリーヌの母の故郷だ。
其方の母は、同盟のためにやってきた侯爵令嬢なんだよ。
スタールリン侯爵家に行くといい。
不自由のない暮らしを約束する!
婚約を解消してはくれないだろうか。
身勝手な理由で本当に申し訳ない!
◆◆◆
まぁ.....陛下が頭を下げることはありませんのに。
すべてはその「愚息」と私の「義妹」が悪いのですから。
恋は人を盲点にさせてしまうのですわね……
「よかったですね」
ライアン、貴方はなんとなく内容を想像しているの?
それとも知っていたの?
でも、実家からの援助が期待できないから、友の家に身を寄せようと思っていましたのに、思わぬ収穫ですわ!
でもまさか、お母様は隣国出身だなんて。
「セリーヌ様......」
スタールリン侯爵家の方々に迷惑をかけるわけにはいかないわよね.....
王妃教育で無駄になってしまいそうな知識はたくさんありますし……
なにか新しいビジネスをしなくては!
そうねぇ~商団とかはどうかしら!
いいわね。
陛下からの資金は商団設立の軍資金にいたしましょう!
「セリーヌ様!書類に署名を」
「あっ!ごめんなさいね。考え事をしていたの!」
いつから、呼ばれていたのかしら?
サラサララン
よし!ばっちり......
「殿下に、エリーこの書類にサインを!」
「あぁ」
ユリウスは、疑いもしないのね。
「ん......?まぁ、これ婚約届じゃないの!嬉しいわ。愛しているわ……殿下!」
「俺も、愛しているよ......エリー。今世界一幸せだ」
よし......婚約届を一番最初に置いた効果はてきめんね。
にしても、目の前で濃厚なキスをするのはやめていただけないかしら?
こちらにハートが飛んできて痛いわ。
でも、その下の書類に疑いもせずに署名を書いてくれるから嬉しいわね。
何かしら?とっても複雑ね......
ーーボキッ
あら?今なんか不穏な音が……あぁ!
ゆっくり振り返ってみれば、ライアン!
あなた、ガラスペン折れてるわよ……
ふふっ......でも、そんなに感情をむき出しにしているライアンは珍しいわね。
「んっん!では、これですべて受理いたします。なお、神殿に行かれるご予定でしたらもう大丈夫ですよ......陛下から承認を頂きましたので、後日でも」
ライアンッ!
神の前で誓ったら天罰が下るのを……わかっているから、言ってくれているのね!
本当に、ライアンがいてくれてよかったわ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あら?
もしかして、軍資金かしら!
読んでいただき、誠にありがとうございます。
本作を読み「本作が面白い!」「続きが気になる!」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価】で応援してくださると幸いです。
また、誤字脱字等ありましたら誤字報告をポチッとお願いします!
今後も続編を作ります!
次回はその後のユリウスたちと、商団立ち上げまでのお話です。
「N3609MY」←次作です!




