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第九話 わたし(俺)、仕組みを仕込む

正しさは、

声を上げるだけじゃ足りない。


あの一件以来、

わたし(俺)は意識的に目立たない行動を取っていた。


発言は最低限。

授業では模範的。

だが――観察はやめない。


(動いてるな)


教師。

上級生。

生徒会。


表では何も起きていない。

だが、水面下で“調整”が進んでいる。


前世で嫌というほど見た光景だ。


(じゃあ、こっちも準備だ)


図書棟。

人の少ない奥の書架。


わたし(俺)は、

学園規則集を一冊抜き取った。


分厚い。

そして――曖昧だ。


「例外」「状況に応じて」「判断は教員に委ねる」


(便利な言葉だな)


だからこそ、

使いようがある。


ページをめくりながら、

頭の中で線を引いていく。


・安全確保義務

・監督責任

・緊急時の裁量権


(……揃ってる)


次に向かったのは、

掲示板。


そこに貼られた、

過去の事故報告の要約。


小さく、

だが確実に書かれている。


「初動の遅れが被害を拡大」


(ほらな)


規則は、

“守らなかった場合”を

一番怖がる。


放課後。

人のいない教室。


ノートを開き、

整理する。


正義を叫ぶ必要はない。

正論で殴る必要もない。


(選択肢を減らす)


相手が

「従うしかない形」を

作るだけだ。


ふと、

視線を感じた。


顔を上げると、

教室の入り口に人影。


――彼女だ。


あのとき、

下駄箱にいた女子生徒。


目が合う。


一瞬、

言葉に迷ったようだったが――


「……勉強?」


「まあ、そんなところ」


曖昧に答える。


彼女は、

少しだけ近づいてきて、

机の上の規則集を見る。


「それ、分厚いね」


「重い」


それだけで、

彼女は小さく笑った。


(踏み込まない)


いい距離感だ。


「大変そう」


「慣れてる」


前世の話はしない。


彼女は、

それ以上聞かず、

「そっか」とだけ言った。


去り際。


「……無理はしないで」


振り返ると、

彼女はもう歩き出していた。


(少しずつ、か)


視界に表示。


《準備進行度:小》

《次段階:条件成立待ち》


(上出来)


正しさは、

刃じゃない。


罠だ。


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