第六十八話 わたし(俺)、守る対象になる
変化は、静かに始まった。
彼女への業務連絡が、
増えた。
「確認事項」
「追加提出」
「念のための面談」
どれも、
形式上は正しい。
でも、
重なりすぎている。
(揺さぶりだ)
彼女は、
弱音を吐かない。
でも、
歩幅が、少しだけ遅くなった。
放課後。
廊下の角で、
呼び止められる。
例の教員。
制度保守派の中心。
「君は」
彼女に向けて言う。
「影響力が、過大だ」
「無自覚なのが」
「一番、危険だよ」
彼女は、何も言わない。
わたし(俺)が、
一歩前に出る。
「その言い方」
「圧です」
「指導だ」
即答。
「線を越えています」
教員は、目を細める。
「君は」
「まだ、学園に必要だ」
「だが」
「彼女は、違う」
空気が、凍る。
視界に表示。
《対象:彼女》
《圧力:個別化》
《危険度:上昇》
帰り道。
「……迷惑?」
彼女が、ぽつりと聞く。
「違う」
「狙われてる」
正直に言う。
「だから」
「一人にしない」
彼女は、
少しだけ笑う。
「前世でも」
「こういうこと、あった?」
「……あった」
「その時は」
「守らなかった」
足を止める。
「今回は」
「違う」
視界に表示。
《選択:明確》
《後退:不可》
翌日。
彼女に、
正式通知が届く。
「役割の一時停止」
理由は、
曖昧だ。
でも、
狙いは明白。
彼女は、
紙を見て、
深く息を吸う。
「……来たね」
「うん」
沈黙。
「どうする?」
彼女が、こちらを見る。
わたし(俺)は、
即答する。
「一緒に、立つ」
権限も、
立場も、
削られていく。
それでも――
守る対象が、
はっきりした。
前世では、
最後まで、選ばなかった道。
今回は、
逃げない。
敵は、強い。
でも、
これはもう――
引き返せない戦いだ。




