第六十七話 わたし(俺)、基準の前に立つ
公開討論は、突然決まった。
「透明性の確保」
「生徒の不安解消」
名目は、整っている。
実際には――
誰が正しくて、
誰が危険かを、
はっきりさせる場だ。
講堂。
生徒、教員、運営部。
全員が、見ている。
壇上に立つのは、
わたし(俺)と、彼女。
そして、運営部代表。
「裁量の逸脱は」
代表が言う。
「秩序を壊します」
「基準なき善意は」
「最も危険だ」
前世で、
何度も聞いた論調。
(同じだな)
わたし(俺)は、
一拍置いてから話す。
「基準は、必要です」
「だからこそ」
「見えない圧力も、基準に含めるべきだ」
ざわめき。
「記録に残らない威圧」
「役割を盾にした沈黙」
「それを放置すれば」
「事故は、必ず起きる」
代表が、冷笑する。
「感情論だ」
彼女が、一歩前に出る。
「違います」
声は、小さい。
でも、通る。
「私は」
「その圧力を、受けました」
「それは」
「判断を歪める力です」
一瞬、
会場が静まり返る。
視界に表示。
《証言:公開》
《共感:拡散》
《敵性反応:顕在化》
後方。
一人の教員が、
腕を組んで見ている。
――あの人だ。
これまで、
直接出てこなかった。
でも、
全ての判断に、
影を落としていた存在。
(制度を守る側の、顔)
討論は、決着しない。
でも、
流れは変わった。
終わり際。
その教員が、
初めて口を開く。
「……理想は、理解した」
「だが」
「学園は、実験場じゃない」
視線が、突き刺さる。
「責任を取れるのか?」
わたし(俺)は、
逃げずに答える。
「取ります」
「一人ではなく」
「関係として」
彼女が、隣で頷く。
視界に表示。
《対立軸:明確化》
《敵:制度保守派》
《関係:対等》
講堂を出た後。
「……あの人」
彼女が言う。
「強いね」
「うん」
「でも」
「正しさしか、見てない」
夕焼け。
敵は、はっきりした。
力も、ある。
でも――
今度は、一人じゃない。
前世でできなかった形で、
わたし(俺)は、
真正面から向き合う。




