第六十六話 わたし(俺)、問われる立ち位置
翌日。
呼び出しは、静かだった。
職員室の奥。
運営部、指導教員、第三者監査役。
人数は多くない。
でも、空気は重い。
「昨日の放課後」
監査役が言う。
「非公式な介入があったと、報告があります」
「事実です」
即答する。
「権限は、理解しています」
「それでも、止める必要がありました」
運営部が、口を挟む。
「立場を越えた行動は」
「秩序を乱します」
「秩序は」
わたし(俺)は言う。
「恐怖で保たれるものではありません」
一瞬、沈黙。
「では」
監査役が、彼女を見る。
「あなたは、どう感じましたか?」
視線が、集まる。
彼女は、深く息を吸ってから、
はっきり言った。
「守られたと、感じました」
「役割を理由に」
「降りるよう迫られた」
「それは、正当な指導ではありません」
言葉は、震えていない。
「彼は」
彼女は、こちらを見る。
「権限がなくても」
「止めるべきだと判断した」
「私は」
「その判断を、支持します」
視界に表示。
《証言:正式記録》
《評価:分岐》
《孤独:共有》
運営部の表情が、硬くなる。
「……感情論では?」
「いいえ」
監査役が、遮る。
「リスク評価です」
「沈黙が続けば」
「学園全体の信頼が、損なわれる」
短い協議。
結論は、曖昧だった。
「処分は、見送る」
「ただし、今後は――」
「明文化を」
わたし(俺)が言う。
「役割と、介入基準の」
監査役が、頷く。
「検討します」
部屋を出る。
廊下で、
彼女が、少し力を抜く。
「……終わった?」
「いや」
「始まった」
夕方の光。
「ねえ」
彼女が言う。
「私、怖かったけど」
「逃げなかった」
「うん」
「それが、一番大事だ」
視界に表示。
《立ち位置:暫定承認》
《関係:公的認識》
《次段階:制度化》
立場は、まだ不安定だ。
敵も、消えていない。
でも――
判断は、記録された。
声は、残った。
それだけで、
前世とは、決定的に違う。
次は、
制度が追いつくか、
それとも――
人が、先に折れるか。
わたし(俺)は、
その分岐点に、立っていた。




