第五十六話 わたし(俺)、裁かれる側に立つ
呼び出しは、唐突だった。
演習後、職員用通路。
無機質な会議室に通される。
机の向こうには、
運営部の教員が三人。
視線は冷静。
だが、好意はない。
「成果は確認した」
一人が言う。
「だが、方法に問題がある」
「命令を避けすぎだ」
「統制が甘い」
「事故が起きれば責任は取れるのか」
予想通りの言葉。
前世なら、
ここで理屈を並べていた。
正しさで、ねじ伏せていた。
でも、今は違う。
「取れます」
静かに言うと、
空気が一瞬、止まる。
「……ほう?」
「わたし(俺)が判断した」
「失敗があれば、わたし(俺)の責任です」
視線が集まる。
「あなたは、まだ生徒だ」
「その覚悟は、重すぎる」
「知っています」
間を置いて、
続ける。
「前世で、同じことをしました」
「責任を取らず、命令だけして」
「誰かを壊しました」
教員たちが、言葉を失う。
「だから今世では」
「裁量を、独り占めしない」
「判断を、分ける」
「失敗も、共有する」
沈黙。
やがて、
最年長の教員が息をついた。
「……理想論だ」
「はい」
「でも、実践しています」
資料が、机に置かれる。
演習記録。
心理安定指数。
再発率の低下。
数字は、嘘をつかない。
「……処分は保留とする」
完全な勝利ではない。
だが、潰されもしなかった。
会議室を出ると、
廊下の先に、彼女がいた。
待っていた。
黙って。
「聞こえてた?」
「全部」
少し、恥ずかしくなる。
「前世の話まで、言うとは思わなかった」
「言わないと」
「同じになるから」
しばらく、並んで歩く。
「ねえ」
彼女が言う。
「あなた、裁かれるの、怖くなかった?」
少し考える。
「怖かった」
「でも、逃げたら――」
「また、加害者になる」
その言葉に、
彼女は、静かに頷いた。
視界に表示。
《前世認識:明確化》
《裁量:共有型へ移行》
《関係:信頼深化》
《命名:次話予定》
夕暮れ。
孤独は、まだある。
でも、それはもう、
罰だけじゃない。
選び続けるための、
距離だ。
そして、次は――
名前を呼ぶ番だと、
わたし(俺)は、はっきり理解していた。




