第五話 わたし(俺)、正論で追い詰める
結論から言う。
教師という立場は、
一番“自覚のない悪行”を生みやすい。
学園に通い始めて数日。
授業にも、ようやく慣れてきた。
魔法理論、属性制御、詠唱短縮。
内容は難しいが、理解はできる。
――理解は、できる。
問題は、担当教師だった。
「そこ、違う」
前方の席で、女子生徒の声が詰まる。
「……はい」
教師は、ため息をついた。
「何度言えば分かるんだ。
才能がないなら、努力くらい見せなさい」
教室が、静まり返る。
(あー……)
来た。
声を荒げているわけでもない。
罵倒しているわけでもない。
だが、
言葉は完全に“上”からだった。
視界に、表示が浮かぶ。
《悪行検知:中度》
《分類:権威利用・人格否定》
(教師か……厄介だな)
前世でも、
「指導の一環」
「事実を言っているだけ」
そう言って、
人の心を削る人間は山ほどいた。
教師は、さらに続ける。
「君は、向いていない。
自覚した方がいい」
女子生徒の肩が、小さく震えた。
――ここだ。
わたし(俺)は、手を挙げた。
「先生」
教室中の視線が集まる。
「何だ」
教師は、少し苛立った顔でこちらを見る。
「今のは、
技術の指摘ですか?
それとも評価ですか?」
一瞬、間が空いた。
「……何が言いたい」
「技術なら、改善点を。
評価なら、基準を教えてください」
淡々と。
丁寧に。
逃げ場を消す聞き方。
教師は、言葉に詰まった。
「それは……」
「“向いていない”は、
どの項目の話でしょうか」
教室が、ざわつく。
(効いてる)
前世の会議室で、
何度も見た光景だ。
感情論を、
言語化で追い詰める。
教師は、咳払いをした。
「……指導だ」
「では、指導として記録に残りますね」
わたし(俺)は、微笑む。
「学園の指導指針に基づいて」
完全に、制度の話に引きずり出した。
教師の顔色が変わる。
「……話を戻そう」
女子生徒の方を見て、
声のトーンが下がった。
「改善点は――」
(勝ったな)
派手な反論はいらない。
怒鳴る必要もない。
“正論を、正しく使う”。
視界に、通知が浮かぶ。
《悪行是正:成功》
《スキル進化条件達成》
《称号:指導殺し(仮)》
(物騒だな)
内心でツッコミつつ、
わたし(俺)は席に戻った。
前世では、
教師も、上司も、
止められなかった。
でも今は違う。
美少女の姿で、
制度と論理を武器にして。
悪行は、
“正論で”終わらせる。




