第四話 わたし(俺)、学園に放り込まれる
結論から言う。
学園は、悪行の宝庫だ。
貴族魔法学園。
名門の子弟が集い、将来を約束された場所。
聞こえはいいが、
中身は――前世でいうところの「エリート職場」に近い。
わたし(俺)は、編入という形で学園に通うことになった。
理由は簡単。
「お嬢様ほどの魔力適性、
閉じた環境に置くのは惜しい」
……建前だ。
実際は、
才能があるなら早く“競争”に放り込め、という話。
(変わらねえな、世界が違っても)
教室に入った瞬間、
視線が一斉に集まる。
銀髪。
美少女。
しかも名門貴族。
――目立たない理由がない。
「……転校生?」
「聞いてないけど」
ひそひそ声。
好奇と、値踏み。
その中で、一番最初に話しかけてきたのは――
貴族然とした男子生徒だった。
「君が噂の編入生かい?」
柔らかい笑顔。
丁寧な口調。
でも。
(距離、近いな)
「困ったことがあれば、
僕が面倒を見てあげるよ」
出た。
前世で何百回も聞いたやつだ。
「君のため」
「善意」
「保護してあげる」
――その全部が、支配の入り口。
視界に、即座に表示が出る。
《悪行検知:中度》
《分類:立場利用・囲い込み》
(中度か。順調に来たな)
わたし(俺)は、にっこり微笑む。
「ありがとうございます。でも」
一拍、置く。
「それって、先生に言うことでは?」
男子生徒の笑顔が、一瞬だけ固まった。
「……どういう意味だい?」
「学園での困りごとは、
正式な窓口がありますよね?」
正論。
完全に正論。
しかも、穏やかな口調。
(逃げ道、塞いだ)
彼は、慌てて取り繕う。
「いや、僕はただ――」
「善意ですよね?」
被せる。
「なら、問題ありませんよね。
記録に残しても」
周囲の視線が、一斉に集まる。
――空気が変わった。
前世でも、この瞬間を何度も見た。
「やりすぎた側」が、
初めて自分の立場を意識する瞬間。
男子生徒は、咳払いをした。
「……そうだね。失礼した」
一歩、下がる。
《悪行抑止:成功》
《経験値+8》
(学園、効率いいな)
わたし(俺)は、内心でため息をついた。
ここは、
才能と立場と善意が、
一番歪んで混ざる場所。
(覚悟しとこう)
この学園、
間違いなく面倒なやつが次々出てくる。
でも。
美少女の姿で、
元・問題社員の視点を持つわたし(俺)にとっては――
ちょうどいい戦場だった。




