第三十六話 わたし(俺)、役割を再定義する
前回の演習から、
学園の空気は少し変わった。
事故は起きなかった。
でも、
全員の判断が揺れた。
その波が、
わたし(俺)に届く。
放課後。
小会議室。
管理職が集まる。
教師も。
セレスも。
「今回の件を踏まえて」
議長が口を開く。
「補佐役の役割を、
正式に再定義したい」
視線が、
集まる。
「これまでの補佐は、
“意見提出”が主体だった」
「しかし」
一拍。
「意見を出さない判断も、
立派な判断として扱う」
(……正解)
「つまり」
議長が続ける。
「必ず声を上げるのではなく、
必要な時に
判断を示すこと」
「誰も止めない場合でも、
役割を果たすとみなす」
わたし(俺)は、
ゆっくり頷く。
「理解しました」
「正式名称は、変わりません」
「現場判断補佐」
「だが」
議長の視線。
「権限は、
より柔軟に扱うことができる」
(権限が拡張、か)
廊下。
彼女が、少し驚いた顔で言う。
「いつの間にか、
“逃げ”じゃなくなったんだね」
「うん」
「立ち位置が、
整理された感じ」
「そう」
空を見上げる。
「肩書きは変わらない。
でも、使い方が変わった」
視界に表示。
《役割:正式化》
《裁量:拡張》
《信頼:再構築》
(ここからだ)
誰もが迷う中で、
判断を示す。
声を上げても、
黙っていても。
重要なのは――
どの瞬間に、
判断を出すか。
これで、
役割は、再定義された。
孤独は、
変わらない。
でも――
意味は、確実に増えた。




