第三十五話 わたし(俺)、言わなかった意味を見る
その日は、
最初から嫌な予感がしていた。
空気が、
軽すぎる。
演習前の雑談。
笑い声。
気の緩み。
(……油断してる)
だが、
わたし(俺)は言わない。
役割はある。
肩書きもある。
でも――
今日は、出さないと決めている。
開始。
進行は速い。
判断も早い。
速すぎる。
誰かが、
一度だけこちらを見る。
目が合う。
(自分で決めろ)
そう言う代わりに、
何もしない。
中盤。
小さな異常。
数値は、基準内。
止める理由は――
ない。
でも、
積み重なっている。
(気づけ)
誰かが、
声を上げる。
「……ちょっと、
早くないか?」
別の誰か。
「でも、
問題は出てない」
議論は、
数秒で終わる。
続行。
そして――
破綻。
結界が、
一瞬だけ揺れる。
致命的ではない。
怪我人もいない。
だが――
全員が、止まった。
教師が、
即座に中断を指示。
沈黙。
「……判断が、
甘かった」
誰かが言う。
言い訳は、
出てこない。
演習後。
空気は、
重い。
誰も、
こちらを見ない。
――いや。
ゆっくりと、
視線が集まる。
責める目じゃない。
期待でもない。
(……自覚だ)
放課後。
彼女が、
隣で言う。
「止めなかったね」
「うん」
「後悔は?」
少し考える。
「ない」
即答。
「今日の判断は」
続ける。
「“自分たちの判断”として、
残った」
「それが、
必要だった」
彼女は、
小さく息を吐く。
「……きつい役だね」
「慣れてる」
視界に表示。
《事故:未遂》
《原因:集団判断》
《学習:発生》
(伝わった)
誰も止めなかった。
だからこそ、
全員が考えた。
言わなかった意味は、
ここにある。




