第三十四話 わたし(俺)、逃げたと思われる
変化は、
静かに広がった。
でも、
好意的とは限らない。
「最近、
口出ししないよね」
「責任、
重くなったからじゃない?」
「制度にしたのに、
引いたって……」
言葉は、
直接届かない。
でも、
必ず耳に入る。
(予想通りだ)
昼。
演習後の片付け。
数人が、
距離を取る。
以前より、
露骨だ。
彼女が、
小声で言う。
「……逃げたって、
思われてる」
「うん」
「悔しくない?」
少し考える。
「悔しい」
「でも」
続ける。
「説明したら、
楽になる」
「でも、
それで変わるのは
“評価”だけ」
彼女は、
黙った。
放課後。
管理職から、
短い連絡。
《最近の対応について、
再考を求める》
(来るよな)
小会議室。
同じ顔ぶれ。
「役割を与えた意味が、
薄れている」
「期待外れだ、
という声もある」
淡々と、
言われる。
「……逃げたと、
思われていますか」
自分から、
聞いた。
沈黙。
「否定は、
しない」
正直だ。
「それでも」
言葉を続ける。
「判断が、
一人に集中する方が
危険です」
「今は、
その過程です」
「過程は、
評価されにくい」
管理職の言葉。
「承知しています」
即答。
「それでも、
必要です」
会議は、
それ以上進まなかった。
帰り道。
彼女が、
立ち止まる。
「……孤独だね」
「うん」
「また?」
「たぶん」
夜風が、
冷たい。
(でも)
逃げたと思われてもいい。
評価が下がってもいい。
今、
誰かが考えているなら。
誰かが、
判断しているなら。
それで、
意味はある。
視界に表示。
《評価:低下》
《誤解:拡散》
《自発判断:維持》
(想定内だ)
逃げじゃない。
これは――
引き受け方を、
変えただけだ。




