第三十一話 わたし(俺)、名前を与えられる
決定は、
あっさりしていた。
前回の演習から、
三日後。
掲示ではなく、
呼び出し。
場所は、
小会議室。
人数は、
最小限。
管理職。
教師。
監査官。
セレスも、
いる。
(公式だな)
「今回の件だが」
議長役が、
書類を置く。
「生徒間での判断が、
非常に安定していた」
「特定の人物の存在が、
影響している」
視線が、
集まる。
「そこで」
一拍。
「非公式だった“抑止力”を、
正式な役割として
位置づけたい」
(名前、来るな)
「名称は――」
少しだけ、
言い淀む。
「現場判断補佐」
堅い。
実に堅い。
「権限は限定的」
「強制力はない」
「ただし」
言葉が続く。
「演習・実地訓練において、
安全判断の参考意見として
記録に残す」
(残る、か)
それは――
無視できない、という意味だ。
「拒否は?」
一応、
聞いてみる。
「できる」
「だが」
監査官が言う。
「現状と、
ほとんど変わらない」
(でしょうね)
「……分かりました」
頷く。
署名。
指先が、
少しだけ重い。
会議が終わる。
廊下。
セレスが、
隣を歩く。
「ついに、だね」
「肩書きがついただけ」
「違う」
彼女は言う。
「“個人の判断”じゃなくなった」
「学園が、
責任を共有した」
(それは……大きい)
中庭。
数人が、
遠巻きにこちらを見る。
近づかない。
でも、目を逸らさない。
一人が、
小さく頭を下げた。
それに、
別の一人が続く。
(始まったな)
視界に表示。
《役割:現場判断補佐》
《影響範囲:拡大》
《責任:公式化》
(名前を、持った)
もう、
ただの生徒じゃない。
でも――
やることは変わらない。
止める時は止める。
見送る時は見送る。
それだけだ。




