第二十八話 わたし(俺)、間違っている側を知っている
孤立している。
それは、
否定できない。
視線は減り、
会話は止まり、
距離だけが残る。
(……懐かしいな)
似た空気を、
知っている。
前世――
いや、昔の記憶だ。
声が大きい側がいて、
正しさを語る側がいて、
何も言わない人間がいた。
その時、
わたし(俺)は思っていた。
――反論しないのは、後ろめたいからだ。
――黙るのは、間違っているからだ。
(違った)
今なら分かる。
黙るのは、
説明しても届かないと
知っているからだ。
孤立するのは、
正しいかどうかじゃない。
“都合が悪い”だけだ。
放課後。
渡り廊下。
彼女が、
横に立つ。
「……一人だね」
「うん」
「不安じゃない?」
少し考える。
「逆」
「え?」
「静かだから、
確認できる」
「何を?」
「自分が、
どっちに立ってるか」
彼女は、
首を傾げる。
「大勢で盛り上がってる時って」
続ける。
「だいたい、
誰も止まらない」
「止める理由が、
見えなくなる」
視線を前に向ける。
「今は、
止める理由が
はっきりしてる」
沈黙。
風が通る。
「……孤独だけど」
言葉を選ぶ。
「この位置、
間違ってない」
彼女は、
少しだけ笑った。
「自信あるね」
「ある」
即答。
「間違ってる側は」
一拍。
「こんな静けさ、
選ばない」
視界に表示。
《自己評価:安定》
《迷い:消失》
《信念:固定》
(もう、十分だ)
理解されなくても、
評価されなくても。
この立ち位置が、
一番、止められる。
それを、
知っている。




