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第二十七話 わたし(俺)、止めなかった罪を背負う

前回の演習は、

成功だった。


記録上は。


怪我人ゼロ。

進行良好。

判断適切。


――なのに。


翌朝、

空気が重い。


廊下を歩くと、

視線が逸れる。


昨日とは、

種類が違う。


(来たな)


噂は、

早かった。


「止めなかったらしい」

「危険だったのに」

「評価のために見逃した?」


言葉は短く、

悪意は膨らむ。


(説明は、されてない)


昼休み。


掲示板。


匿名の紙が、

貼られていた。


《抑止力の基準は誰が決める?》

《怪我が出たら、誰が責任を取る?》


剥がされていない。


つまり――

黙認だ。


放課後。


呼び止められる。


あの上級生だ。

前回、見送った本人。


「……噂、聞いた」


「うん」


「俺のせいだ」


即座に首を振る。


「違う」


「でも」


彼は、

歯を噛みしめる。


「止めてくれたら、

 楽だった」


(それも、事実)


「止めなかったのは」


言葉を探す。


「君が、

 止められる人間だと

 判断したから」


「……信じたってこと?」


「そう」


沈黙。


「重いな」


「うん」


彼は、

少し笑った。


「でも」


「悪くなかった」


それだけ言って、

去っていった。


救われる言葉――

だが、足りない。


帰り道。


彼女が、

隣を歩く。


「矢面に立たされてるね」


「うん」


「説明、しないの?」


「したら」


少し考える。


「言い訳になる」


彼女は、

足を止めた。


「それでも、

 言わないと」


「分かってる」


空を見上げる。


「でも、

 今じゃない」


視界に表示。


《評価:分裂》

《支持:限定》

《反発:増加》


(正解は、まだ先だ)


止めなかった判断は、

間違っていない。


でも――

理解されるとは限らない。


それでも、

引き受けた。


それが、

抑止力の役目だから。

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