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第二十六話 わたし(俺)、止めないという選択

抑止力としての立ち会いは、

思ったよりも淡々としていた。


特別扱いはない。

席も、権限も。


ただ――

「そこにいる」だけ。


だからこそ、

視線が集まる。


演習区画。

上級生主体の実戦形式。


難度は高い。

だが、無茶ではない。


(判断が割れるやつだ)


開始。


魔力の立ち上がり。

結界の応答。

補助の配置。


すべて、基準内。


だが――

一人だけ、動きが違う。


前に出すぎている。

判断が速い。

速すぎる。


(焦ってる)


原因は、分かる。


評価演習。

立ち会いあり。

抑止力あり。


(試されてるな)


危険度は、

じわじわ上がる。


止める理由は――

まだ、弱い。


教師が、

こちらを見る。


合図じゃない。

確認だ。


(どうする)


止めれば、

安全。


でも、

彼の判断は間違っていない。


遅れれば、

別の事故が起きる。


(……見送る)


わたし(俺)は、

小さく首を振った。


教師は、

一瞬だけ目を細め――

続行を指示した。


緊張が、

高まる。


そして――

成功。


魔法は制御され、

演習は終わった。


拍手。

安堵。

評価は高い。


彼は、

こちらを見た。


誇らしげでもなく、

怯えでもない。


(学んだな)


放課後。


「止めなかったね」


彼女の声。


「うん」


「怖くなかった?」


「怖かった」


正直に言う。


「でも」


続ける。


「全部止めたら、

 何も育たない」


彼女は、

少し考えてから言う。


「抑止力って」


「うん」


「止める人じゃなくて」


「止めない責任を、

 引き受ける人かもね」


その言葉が、

胸に残る。


視界に表示。


《判断:見送り》

《結果:成功》

《信頼:微増》


(試された)


止めなかったことも、

また――判断だ。

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