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第二十五話 わたし(俺)、抑止力になる

前回の会合の翌日。


何かが変わると、

はっきり分かる朝だった。


廊下が、

静かすぎる。


教師の視線が、

妙に慎重だ。


(……広まったな)


噂は、

正確ではない。


でも方向性だけは、

間違っていない。


「理事会に呼ばれた」

「上と話した」

「処分されなかった」


それだけで十分だ。


昼前。


演習区画の入口。


見覚えのある監査官が、

立っていた。


「少し、時間いいかな」


拒否権は、

ない。


区画の隅。


「学園側から、

 正式な要請があった」


嫌な予感しかしない。


「今後、

 重要な演習には」


一拍。


「君を、

 立ち会わせたい」


(来たか)


「監督ではなく、

 観測者として」


「判断権は、

 教師にある」


「ただし」


視線が鋭くなる。


「君が“異常”と判断した場合、

 中断を検討する」


(……抑止力だ)


「拒否は?」


「できる」


即答。


「でも」


続ける。


「拒否した場合、

 別の誰かが座る」


「もっと、

 従順な誰かが」


(分かりやすい)


「……条件があります」


言葉を選ぶ。


「立ち会う演習は、

 記録を残す」


「判断基準は、

 事前に共有する」


「個人の裁量に、

 押し付けない」


監査官は、

少しだけ笑った。


「だから、

 君なんだ」


放課後。


中庭。


「聞いた」


彼女は、

腕を組んでいる。


「抑止力?」


「そう呼ぶらしい」


「便利な言葉だね」


「便利すぎる」


彼女は、

少し考えてから言う。


「それ、

 守る側?」


「両方」


正直に答える。


「守るし」

「使われる」


沈黙。


「……怖くない?」


「怖い」


即答。


「でも」


空を見上げる。


「何もしない方が、

 もっと怖い」


視界に表示。


《役割:抑止力》

《自由度:低下》

《影響力:上昇》


(立場は、重くなった)


守れる範囲は、

広がった。


代わりに――

逃げ道は、消えた。

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