第二十四話 わたし(俺)、席に座らされる
呼び出しは、
丁寧すぎるほど丁寧だった。
日時。
場所。
目的。
すべて、
ぼかされている。
(上だな)
会議室は、
学園の奥。
普段、生徒は立ち入らない。
長い机。
高い天井。
重い椅子。
座っているのは、
理事。
管理職。
外部監査。
生徒は――
わたし(俺)だけ。
「緊張しているかね」
年配の理事が、
穏やかに言う。
「いいえ」
嘘ではない。
「今回の件」
別の理事が続ける。
「君の指摘が、
不正を明らかにした」
「学園としては、
感謝している」
(前置きだ)
「しかし」
来た。
「方法が、
危うい」
「越権行為と、
取られかねない」
「前例を、
作りすぎた」
全員、
同じ方向を向いている。
(囲まれてるな)
「質問があります」
許可を待たずに言う。
「今回の妨害」
「事故が起きていたら、
どうなっていましたか?」
一瞬、
空気が止まる。
「仮定の話だ」
理事の声。
「では」
続ける。
「起きなくて、
本当によかった」
「それが、
すべてですか?」
沈黙。
「学園は」
わたし(俺)は、
ゆっくり言葉を選ぶ。
「事故が起きない前提で、
運用されています」
「でも」
視線を巡らせる。
「現場は、
失敗を前提にしています」
「だから、
止めました」
「越権でも、
前例でも」
「守れたなら、
それでいい」
理事の一人が、
腕を組む。
「君は、
危険な思想だ」
「知っています」
即答。
「でも」
「安全な思想は、
人を救いません」
誰も、
すぐには反論しなかった。
「……今回は」
議長役が言う。
「処分はしない」
「だが」
「これ以上、
踏み込むな」
(線を引いたな)
「分かりました」
立ち上がる。
「ただし」
振り返る。
「事故が起きたら」
「また、止めます」
言い切る。
視線が、
重なる。
誰も、
否定しなかった。
廊下に出た瞬間、
息を吐いた。
(席に、座らされた)
対等じゃない。
でも――
無視もされなかった。
それで十分だ。




