第二十三話 わたし(俺)、切られる側を見る
前回の証拠提出から、
判断は早かった。
早すぎるほどに。
翌朝。
学園内通達。
《一部職員の配置転換について》
《安全運用体制の再編》
名前はない。
理由も、書かれていない。
でも――
分かる人には分かる。
(切ったな)
噂は、
すぐに具体化した。
結界補助員。
器材管理担当。
非常勤職員。
責任の所在は、
そこに集められた。
「現場の確認不足」
「運用理解の甘さ」
便利な言葉だ。
(……末端だけ)
昼休み。
中庭の端。
一人の上級生が、
ベンチに座っていた。
前に見た顔。
反対派の、
あの委員会所属。
目が合う。
「……満足か?」
低い声。
「誰の?」
「俺たちが、
切られて」
「上は、
無傷だ」
(来た)
「証拠を操作したのは?」
問い返す。
彼は、
目を逸らした。
「……指示だった」
「誰の?」
答えない。
沈黙。
「俺は、
正しいと思ってた」
彼は、
絞り出すように言う。
「規則を守れば、
安全だって」
「でも」
拳を握る。
「事故が起きても、
責任は現場に落ちる」
(知ってしまったか)
「あなたは」
彼は、
こちらを見る。
「それを、
分かってて動いたんだろ?」
「うん」
否定しない。
「だから、
嫌われる」
「だから、
切られる」
彼は、
苦く笑った。
「……覚悟、決まってるな」
「今さら」
背を向ける。
「次は、
俺じゃないかもな」
その背中は、
少しだけ小さかった。
放課後。
「……残酷だね」
彼女が言う。
「上は守られて、
下が切られる」
「よくある話」
「それで、いいの?」
「よくはない」
即答。
「でも」
続ける。
「見せないと、
変わらない」
「切られる側を」
視界に表示。
《対立:深化》
《犠牲:顕在化》
《次段階:上層への波及》
(ここからが、本当の敵だ)
末端じゃない。
現場でもない。
判断を、
安全圏で下している側。




