第二十二話 わたし(俺)、罠を張る
前回の妨害は、
失敗として処理された。
被害なし。
証拠なし。
責任の所在なし。
完璧な“不運”。
(次も来る)
それだけは、
確信できた。
だから――
先に動く。
準備は、
静かに進めた。
刻印は二重化。
表の設定と、
裏の記録。
結界の反応速度。
魔力の流量。
外部からの干渉。
すべて、
独立ログに落とす。
(触れば、残る)
場所は、
また同じ区画。
条件も、
似せる。
悪意を誘うには、
“成功体験”が一番だ。
開始前。
彼女が、
小さく囁く。
「本当に、来ると思う?」
「来る」
即答。
「来なければ、
それでいい」
「来たら?」
「証明できる」
演習開始。
最初は、
何も起きない。
魔力は安定。
結界も正常。
(焦るな)
三分。
五分。
――来た。
結界の反応が、
ほんの一瞬、鈍る。
普通なら、
見逃す。
だが今回は――
(捕まえた)
裏ログが走る。
外部からの、
微弱な干渉。
器材庫側。
遠隔。
教師が気づく前に、
わたし(俺)は声を出す。
「停止を」
教師は一瞬迷い――
だが、手を上げた。
「中断!」
結界は維持。
事故は起きない。
補助員が、
慌てて端末を見る。
「……反応履歴が、
おかしい」
集まる視線。
「これ、
外部操作……?」
わたし(俺)は、
黙って記録を提出した。
二重ログ。
時刻一致。
操作痕跡。
否定は、
もう無理だ。
その場の空気が、
変わる。
(獲った)
放課後。
小会議室。
監査官。
セレス。
管理職。
誰も、
軽口を叩かない。
「……これは」
管理職が、
言葉を選ぶ。
「意図的な、
妨害です」
セレスが、
はっきり言った。
逃げ場はない。
視界に表示。
《証拠:確保》
《妨害者:特定可能》
《次段階:処分判断》
(ここからだ)
正義は、
主張するものじゃない。
残すものだ。




