第十八話 わたし(俺)、名前が独り歩きする
前回の処分から、
数日が過ぎた。
表面上、
学園はいつも通りだった。
授業は進む。
演習は行われる。
規則も、変わらない。
――でも。
視線が、増えた。
廊下を歩くと、
会話が一瞬止まる。
「……今の」
「聞いた?」
わたし(俺)の名前は出ない。
それでも分かる。
(広がってる)
原因は、
学園の外だった。
購買前。
掲示板。
貼り出されたのは、
外部講師の来訪告知。
その横に、
小さな紙が追加されている。
《安全運用に関する特別聴講》
《対象:希望者》
(……動いたな)
放課後。
聴講室。
普段は使われない小部屋に、
生徒が集まっていた。
上級生。
下級生。
顔ぶれは、ばらばら。
講師は、
学園外の監査官だった。
「近年、
事故の多くは
規則違反ではなく」
淡々とした声。
「“規則の想定外”で起きています」
ざわめき。
「現場判断を、
完全に排除すると、
被害は減るが――」
一拍。
「見逃しが増える」
(……来た)
スライドに映るのは、
過去の事例。
中断が遅れた演習。
判断待ちで拡大した被害。
どれも、
最近の学園と重なる。
「重要なのは」
監査官は言う。
「誰が、
どう責任を持つかです」
視線が、
室内を巡る。
一瞬――
こちらで止まった。
(気づいてる)
聴講後。
人だかりが、
自然とできた。
「さっきの話、どう思う?」
「実際、現場って――」
質問が飛ぶ。
わたし(俺)は、
答えなかった。
「考え方は、
人それぞれ」
それだけ言って、
その場を離れる。
廊下の曲がり角。
彼女が、
待っていた。
「……噂、聞いた?」
「聞こえてくる」
「名前、出てないけど」
「出す必要はない」
彼女は、
少し不安そうに言う。
「これ、
大きくならない?」
「なる」
即答。
「もう、止まらない」
視界に表示。
《外部認知:進行中》
《評価軸:拡散》
《次段階:象徴化》
(個人じゃ、終わらない)
意図しなくても、
名前は歩く。
考え方は、
人を集める。
それが――
一番、厄介で。
一番、強い。




