第十三話 わたし(俺)、言葉で刃を交える
前回の件以来、
学園の空気は、さらに張りつめていた。
安全。
秩序。
規則。
どれも正しい。
だが――息苦しい。
廊下を歩いていると、
進路を塞ぐように立つ影があった。
銀髪。
澄ました表情。
セレス=アルディア。
「少し、時間いいかしら」
断りようのない声音。
「構いません」
わたし(俺)は、
周囲に人がいないのを確認して答えた。
場所は、
人気のない中庭。
「最近の動き」
セレスは前置きもなく切り出す。
「あなたが、
学園の運用に影響を与えている」
「評価として、
ありがとうございます」
皮肉は通じない。
「褒めてはいないわ」
「分かっています」
視線が交差する。
彼女は、
ほんのわずかに目を細めた。
「あなたのやり方は、
正しい」
(来るな)
「でも、
危険でもある」
「どこがですか?」
即座に返す。
「秩序は、
一度強化すると戻らない」
「安全を理由に、
自由は削られる」
(同じ結論だ)
「だから、
今の形にしています」
「必要以上には、
踏み込んでいない」
セレスは、
一瞬だけ言葉を探した。
「……それを、
あなたが決めるの?」
「はい」
即答。
「現場にいるのは、
わたし(俺)です」
「責任も、
理解しています」
沈黙。
風が、
中庭の葉を揺らす。
「あなたは、
怖くないの?」
「何が?」
「排除されること」
前世なら、
この質問で終わっていた。
だが今は――
「怖いですよ」
正直に言う。
「だから、
仕組みにしています」
「個人の善意じゃ、
守れないから」
セレスは、
小さく息を吐いた。
「……厄介ね」
それは、
最大級の評価だった。
「あなたを、
敵とは見ていないわ」
「光栄です」
「でも」
一歩、近づく。
「味方とも、
思っていない」
「それでいい」
わたし(俺)は、
一歩も引かない。
「同じ方向を見て、
立っている場所が違うだけです」
セレスは、
しばらくわたし(俺)を見つめ――
微笑んだ。
「本当に、
面白い子」
背を向け、
歩き出す。
(刃は交えた)
勝敗はない。
だが――
退かせはしなかった。
今回は、
主人公とセレスが「思想として対等」になった回です。
次は、言葉では止められない事件が起きます。




