第十一話 わたし(俺)、正しさで縛られる
正しさは、
武器にもなるが――
鎖にもなる。
第十話の翌日。
学園の空気は、
一見すると穏やかだった。
事故は減った。
教師の指示は明確になった。
生徒たちも、以前より慎重だ。
(表面上は、成功)
だが。
「――次の授業ですが」
教師が告げた内容に、
わたし(俺)は小さく眉を動かした。
「本日より、
緊急時対応の判断は
生徒会補佐が立ち会います」
教室がざわつく。
(生徒会、来たか)
視線の先。
教室後方に立つ影。
セレス=アルディア。
腕を組み、
静かにこちらを見ている。
(完全に、取りに来てる)
模擬戦が始まる。
ルールは、
昨日よりさらに厳格だ。
少しでも異変があれば、
即中断。
判断は――
教師と、生徒会補佐。
つまり。
(わたし(俺)には、
何もさせない)
開始直後。
またしても、不安定な魔力。
前なら、
一歩踏み出していた。
だが。
「動くな」
教師の低い声。
結界が展開され、
中断。
事故は防がれた。
だが、同時に――
わたし(俺)は“何もできなかった”。
視界に表示。
《介入不可》
《行動制限:適用中》
(……そう来るか)
放課後。
廊下で、
彼女が足を止めた。
「……今日は、何もしなかったね」
責める声じゃない。
事実の確認。
「できなかった」
正直に答える。
彼女は、
少し唇を噛む。
「それって……」
「うん」
続きを言わせない。
「わたし(俺)の作った流れだ」
沈黙。
「でも」
彼女が、
小さく言う。
「それでも、
誰も怪我しなかった」
「それも事実」
前世なら、
ここで折れていた。
(今回は)
視線を上げる。
廊下の先。
セレスが、こちらを見ていた。
(縛るつもりなら)
心の中で、
静かに告げる。
(縛り返すだけだ)
視界に、
新しい表示。
《制約理解:完了》
《次段階:抜け道探索》
(まだ、終わってない)
正しさは、
形を変える。
そして――
必ず、隙がある。




