47話:調薬
アンデッド討伐をした翌日。
6日連続討伐となってしまっていたので、今日はちゃんと休む。
昨日の帰りが遅かったので寝る時間は遅くなったが、いつも通りに早起きして鍛錬をしてから朝食を食べた。
朝食を終えてから、片付けをしているスワンさんに声を掛ける。
「スワンさん、片付け終わった後で時間ありますか?」
「あぁディックスね、大丈夫よ。
セリアさんから少し話を聞いているし。ちょっと待っててね」
「手伝いますね」
10分ほどで片付けは終わり、セリアさんに着いていく。
辿り着いたのは院長室の隣にある副院長室という名のセリアさんの部屋。
院長室には何度も入ったことがあるが、副院長室は初めてだ。
部屋に入ると、院長室より狭いが院長室より大きな机があり、その上には見たことが無いものが置かれている。
「お待たせしました。
まず、調薬のスキルを獲得したそうですね、おめでとうございます。
それで何を聞きたいのですか?」
「ありがとうございます。
色々と聞きたいですが、まず調薬スキルの使い方について教えて下さい」
「分かりました。その前にいくつか確認しますね。
ディックスは薬師になるつもりは無く、冒険者として活動する上でポーションがあると便利だから調薬スキルを使えるようになりたいという考えで合っていますか?」
「はい。セリアさんにも伝えましたがその通りです。
あとはポーションを売って儲けられたらいいなとも思っています」
「ではまずポーションを売るという方から説明しましょうか。
結論から言うと、ディックスがポーションを売ることはすぐにはできません。
それはポーションの作成、販売にはアミューズ王国または各領主の許可が必要だからです。
これはポーションの質を担保することが目的です。
作成の許可を得るには、調薬スキルを持っていることを鑑定などにより証明した上で、許可を出す領主館にいる担当者の前で実際に作成をして見せることが必要になります。
また、薬師ギルドへの所属も必要であり、こちらは薬師ギルドに加入している薬師の元での一定期間の修行が必要になります。
ディックスの場合は、この一定期間の修行というのが難しいと思いますね」
「確かに難しいです。
ということは、私がポーションを作って売るのは不可能ということですね」
「表向きはそうですね。ただ、実際はそうではありません。
というのも、許可を得ている薬師がポーションの質を担保すれば売ることはできます。
具体的に言いますと、ディックスが作ったポーションを私が買い取ってから販売するのは認められています。
ただし、そのポーションが効果が無かったり、初級ポーションを中級ポーションと偽ったりすると、私が罰せられて、罪の重さによっては許可の剥奪となります。
なので、簡単に薬師は他人からポーションを買い取ることはしませんが、可能ではあるのです」
「なるほど。では、私がスワンさんに買い取ってもらえるように努力すれば可能ということですね」
「そうなりますね。まぁ実際にやる人はほとんどいませんけどね。
調薬スキルを薬師以外のジョブの人が取得すること自体が稀であり、薬師の人は修行して薬師ギルドに加入しますから。
さて、それでは実際に作り方を教えましょうか。
まずは私が作るので見ていて下さい」
スワンさんは、机の上にあるよくわからない容器に薬草を入れていく。
そこに水を入れて火を付けた。
「薬草に水を入れて煮立たせることで、薬草からポーションに必要な成分を取り出します。
この取り出す際にスキルを使用すると、より多くの成分が取り出せます。
取り出し終わると薬草の色が変わりますので、そうしたらこちらの容器に入れ替えて煮詰めていきます。
この煮詰め方によって、初級、中級、上級と変わっていきます。
最後に、ポーション用の容器に入れて完成です」
スワンさんの説明をしっかりと聞く。
説明をしながら調薬スキルを使ったようで、一気に薬草の色が変わった。
どんどん進めていき、初級ポーションが完成した。
「作り方は以上です。
注意点としては、煮立たせたり煮詰めたりする際に火力を上げすぎて焦がしてしまうとポーションの成分を壊す成分が生成されてしまい、全部がダメになってしまいます。
あと、薬草10枚で初級ポーション、100枚で中級ポーション、1,000枚で上級ポーションが作れますが、枚数が増えるとそれと同様に時間もかかり、失敗する可能性が上がります。
初級ポーションから作り始めて、必ず成功するようになったら中級に上げていくべきですね」
「ありがとうございます。
質問ですが、スキルを使用するとより多くの成分が取り出せると説明してくれましたが、スキルを使用しなくてもポーションを作れるということでしょうか」
「そうですね、ポーションを作ることはできます。
ただし、成分が少ないので、初級ポーションを作るのに薬草は30枚くらい必要ですし時間もかかります。
また、薬草の色が変わらないので、ポーションに必要となる質に達していないものになる可能性も高いです。
つまり、失敗する可能性は高く、原材料費も高い。
さらに時間がかかるので、時間あたりの生産量は少ないため儲からない。
その結果として、調薬スキルを使わずにポーションを作る人はほぼいませんね。
たまに趣味で作る人はいますが、自分で使う用という感じですし」
「分かりました。では初級ポーションから挑戦してみます」
Money is Allで薬草を10枚用意して、容器に水と共に入れて煮立たせる。
都度スワンさんに確認しながら進めていく。
水は多すぎると煮立たせるのに時間がかかるが、少ないと焦げやすいので、ポーション容器より少し多いくらいにすると良い。
焦げないように混ぜながら、煮立ったら火を弱くしてから、落ち着いてスキルを使用する。
スキルを使用して薬草の色が変わったら容器を一旦火から外して、薬草を取り出すか、ポーションを別の容器に入れるか。どちらでも容器が2つ必要なので、容器に薬草が残りにくい後者のやり方をする人が多い。
上級になると容器も大きい必要があり、持ち上げるのが難しいのでその場合は薬草を取り出す人が多い。
私の師匠はいかに少ない薬草でポーションを作るかを試行錯誤するのが好きな人だった。
アドバイス以外にも色んなことを話しながら、30分くらいで1つのポーションが完成した。
「どうでしょうか、スワンさん」
「はい、問題ないでしょう。そのポーションはどうしますか?
ちなみに、ポーションは作成してから3ヶ月程度で効果が無くなりますから、持ち続けてもあまり意味は無いですよ」
「そういえばそうでしたね。祝福を与えられる前に教えてもらった気がします。
では買い取ってもらえますか?ちなみにいくらになりますか?」
「では1,200Gで買い取りますね。
この価格は私が作って商店に持ち込んでも同じですよ」
「それではダメです。この設備の使用料とポーション容器の値段が含まれていません」
「はぁー。本当によく気づきますね。
毎日肉を渡してもらっているので、その分高く買い取ろうと思ったのに。
ではポーション容器分で100G引いて1,100Gにしましょう。
この設備は私や他の子も使うのでいつでも使えるわけではないですが、孤児院の設備みたいなもので他の子も無料で使ってますのでお金は取れません」
「分かりました。それで大丈夫です。
じゃあ今日はずっと作っていていいですか?」
「いいわよ。ポーション容器はそっちの棚に入っているから使ってちょうだい。
あと、ポーションを作ったらその都度容器は洗ってね」
スワンさんはそう言って部屋を出ていく。
まだ9時頃である。何個作れるかな。
その後昼食休憩を挟んで夕方まで続けて、初級ポーションを21個作成した。
「スワンさん、夕食後に作った初級ポーションの買取をお願いします。
全部で21個になります」
「21個ですか。分かりました。
夕食の片付け後に私の部屋に来て下さい」
そう言うスワンさんの顔は戸惑っているような表情をしていた。
夕食の片付け後に副院長室を訪れる。
「はい、21個全て初級ポーションとして品質に問題はありません。
ちゃんと鑑定したから安心してちょうだい。
それでポーションはこの箱に入れてちょうだい。明日馴染みの商店に売ってくるから。
じゃあ代金を払うから手を出して。
はい、最初のと合わせて22個分で24,200Gよ」
「マイカード。
はい、確認しました。ありがとうございます」
「ねぇディックス。今日は何時間調薬したの?」
「そうですね。
スワンさんに教えてもらってから昼食までの3時間、昼食後から夕食までの5時間で合計8時間だと思います」
「8時間で21個ですか…初心者は1時間で1個程度、慣れてきて30分1個くらいなのよ。
それがあなたは最初から30分、その感じだと最後の方は20分くらいかしら?」
「そうですね、それくらいだと思います」
「ステータスの高さが関係しているのかしら。
あまり薬師はレベルを上げないから分からないけど、有名な薬師はレベル高かったはずだし。
あと個人的に聞きたかったことがあるのだけどいいかしら?」
「はい、何でしょうか?」
「最近のディックスは1日で7万G以上稼いでいるのよね?
それだけ稼げばもう十分なんじゃないかと思うのだけれど、どうしてもっと稼ごうとしているの?
あと、それと同じで強くなろうとしているのもどうしてなの?」
「稼ぎは1日7万G以上になっていますが、私のスキルの影響でそうなっているだけで、普通の冒険者なら2万Gも稼げていないです。
まだまだここで満足して止まるべきではないと思っています。
それと稼いでも稼ぎすぎることはありません。
孤児院の生活をもっと良くするためには全然足りませんし、いつかケガか何かで戦闘ができなくなる可能性もありますので沢山稼いでおきたいのです。
それと強くなろうとしている理由ですが、強い方が稼げるという理由の他に、冒険者を始めてから強くなること、成長することが楽しいのです。
ステータス上の強さだけでなく技量としての強さもそうで、とにかくもっと強くなりたいのです。
あとは、まだまだ知らないことが多く、街の外やダンジョン、王都にもいつか行ってみたいです。
そのためにも強くて困ることは無いと思っています。そんな所でしょうか」
「あなたは本当に自分のため以上に周りの人のために頑張る子ですね。
セリアさんもよく言っていると思いますが、無理はしないで下さいね」
副院長室を出てベッドに向かう。
ここまで自分の考えを伝えたのは初めてかもしれない。
伝えて思ったけど、やっぱり私は稼ぐのと強くなるのが好きなんだろうな。
まだまだ上を目指したい。
稼いで強くなる、強くなって稼ぐ。
どこまで行けるか分からないけど、行けるところまで行ってみたい。
xxxxxxxxxx
所持金:0G
借金:▲3,267,780G
xxxxxxxxxx




