30話:相談
ホーンラビットにAcquisitionsを使ってステータスを大幅強化した翌日。
今日は5連続討伐後なので休みである。
起きてすぐにステータスで借金を確認する。
Leveraged Buyoutの説明だと、”一定の割合を掛けた金額分、毎日借金が増える。”とあったので、どう増えたのかを確認する必要があったためだ。
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名 前:ディックス
年 齢:10歳
レベル:7
経験値:0 / 1,142
ジョブ:Fund Manager
筋 力:53
敏 捷:53
器 用:27
知 力:12
スキル:All is Money、Money is All、Due Diligence、
Acquisitions、Leveraged Buyout、Carve Out、剣術
Acquisitions:スライム、ワーム、ジャイアントラット、ホーンラビット
Acquisitionsスキル:酸攻撃、締め付け、引っかき、突撃
借 金:▲691,110G
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昨夜から210G増えている。これが利子か。割合だと0.03%くらい増えている。
これくらいならこれまでのペースで稼げば気にしないで良さそうだ。
鍛錬はいつも通りにやったが、やはりまだ強化されたステータスが身体に慣れていないので振り回されていた。
朝食後、気になることができたので防具をつけていつもの武器防具の商店にやってきた。
店に入って店員さんを見つけて声を掛ける。
「すみません、この防具をこちらで購入したのですが、このレッサーベア素材の防具で北の森の攻撃にどの程度耐えられるのでしょうか?
特にグリーンスライムの酸に対する性能を教えていただけますか?」
そして、このレッサーベア素材の防具の性能、特にグリーンスライムの酸に対する性能を聞いた。
というのも、北の森で討伐数を増やすにあたって、1番の問題点がグリーンスライムだということに気づ
いたからだ。
グリーンスライム以外は不意打ちをくらう可能性は低いが、グリーンスライムだけは迷彩というスキルの効果もあってその危険性がある。
でも、もし不意打ちをくらっても防具で防げるなら、グリーンスライムを探すために慎重に進む必要が無いのではないかと思ったのだ。
「グリーンスライムの酸攻撃ですか。
問題なく耐えられますが、酸が防具についたままで放置すると徐々に溶かされていくので、なるべく早く水で洗い流して、水分をタオルで拭き取るようにしてください」
ワクワクしながら回答を待っていたが問題ないということだったので、これで討伐数を増やせると確信した。
まぁいざとなれば40,000Gなので買い替えよう。今の借金と比べればなんてことはない金額なのだから。
討伐の際は防具で守りきれない顔や手にだけ気をつけよう。そこに当たってしまったらすぐにポーションだな。
確認したかったことは終わったので店を出て孤児院に戻る。
セリアさんの手伝いをするか、下の子の相手をするか、どうしようかと思いながら孤児院の敷地に入ると、
「ディックス帰ってきた!」
と女の子が駆け寄ってきた。彼女はヴェロニカ。1つ年下のチーターの獣人であり、元気ハツラツでいつも走り回っている子だ。
街にも獣人はいるが、孤児院は獣人の比率が高めだ。身体能力は高いが、その分器用さが低いという特徴がある。
彼女とは休みの時によく一緒に走っているが、今日も一緒に走って欲しいのかな。
「ただいま。今日はどうした?いつもみたいに一緒に走るか?」
「ちょっと相談があるのよ。
院長先生に相談したら、ディックスにも聞いてみたらって」
珍しく相談を受けたので話を聞く。
ヴェロニカは1月に祝福についてセリアさんから説明されて、それ以降どういうジョブに就きたいかを考えているが、それが全く決まらないという。
やりたいことはあって、それは走ること。とにかく走ることが好きだし、誰よりも早く走れるようになりたい。ずっと走っていたい。でも、それが何のジョブになるのか分からない。
セリアさんにも相談して、速さを活かして戦うのはどうかとアドバイスをもらったが、武器を使うのは嫌らしい。他に物を運ぶ仕事に就くのはどうかと言われていいかもと思ったが、走るよりも物を大切に運ばないといけないので、ちょっと悩ましいとのこと。
どうして私に相談するようにセリアさんが言ったのかは分からないが、どうするのがよいのだろうか。
「ヴェロニカ、ディックスを困らせちゃダメだよ。
まだ1ヶ月も経ってないんだから、もう少し自分で考えてみたら?」
そこにやってきたのは、ヴェロニカと一緒にいることが多いノクス。彼も1つ年下だがフクロウの獣人で、ヴェロニカとは異なり人見知りで大人しい子だ。ヴェロニカに振り回されているか、部屋で静かに本を読んでいるのを見かける。
相性はそんなに良くない気がするが何故か仲は良い。姉弟ではないが、ほぼ同じタイミングで孤児院に引き取られた影響が大きいのだろうか。
2人のやり取りを聞きながらヴェロニカへのアドバイス内容を考えるが、これでいいのだろうか。
自信がなく、セリアさんからのアドバイスで十分なのではないかと答えようと思ったが、目をキラキラさせながらヴェロニカがこちらを見てくる。
「私が与えられたジョブは特殊だけど、セリアさんの教えで1年間鍛錬したり勉強したり、それは今に繋がっているんだ。
鍛錬したからモンスターと戦えているし、勉強したからお金について効率よく考えることができている。
ヴェロニカの就きたいジョブが分からないなら、走ったり勉強したり、やりたいことやるべきことにちゃんと取り組んでおくのがいいと思うよ。
どんなジョブになっても必ず役立つだろうから。
そして祝福ではヴェロニカに合ったジョブが与えられると思うよ。
まぁそれでも何か戦えるようになってる方がいいよ。
武器が嫌なら一緒に球を投げようか。それか武器無しで格闘もありかもね」
ヴェロニカの視線に勝てず、自信は無いが考えた内容を伝えた。これで良かったのだろうか。
不安ではあるが、ヴェロニカはそれを聞いて投擲機材が置いてある所に向かってジャイアントラットの球を投げ始めた。
ただ走る方が好きだからか、すぐに走りながら投げるようになった。
楽しそうにやるのが一番だな。そんなことを思いながら、一緒に見ていたノクスに声を掛ける。
「ノクスは就きたいジョブは決まっているのか?」
「本を読むのが好きだからそういう仕事ができたらいいな、それなら学者かなと思ってたけど、さっきのディックスの話を聞いて、僕も目の前の鍛錬と勉強を頑張ろうと思うよ。
僕に相応しいジョブが与えられるって信じてみる」
そう言って、ノクスもヴェロニカの元に向かって飛んでいき、一緒に球を投げ始めた。
お互いに助け合っていって欲しいな。
振り返って孤児院の中に入ろうとすると、すぐ後ろにはセリアさんがいた。
どうやらやり取りを聞いていたようで、ニッコリと微笑んで孤児院の中に入っていった。
あのアドバイスで良かった、ということなのだろうか。
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所持金:0G
借金:▲691,110G
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