3話:領主館
しっかりと休んだ翌日。今日はこれからセリアさんと一緒に領主館へ向かう。
祝福の後にやることはその時になってから教えれば十分、ということで何をするのかを事前に教えてくれなかったが、祝福を受けた子供は必ず住んでいる街の領主館へ行くことが決められているそうだ。
領主館は孤児院とは街の反対側である北側にあり、この街で一番大きな建物だった。
領主であるクロス伯爵は裏手の別の建物に住んでいて、ここでは領の運営を行ってるとのこと。軍もすぐ近くに訓練場を備えた建物があり、この付近は領主関連の建物の集まったエリアである、とセリアさんが説明してくれた。
建物に入ると広い玄関のような空間で、左右には上の階に行く階段があり、空間の先には何人かの人が書類を書いたり確認したりしていた。
「すみません、祝福を受けましたので手続きに来ました」
「そちらの席にお座り下さい」
セリアさんが書類を書いている若めの男性に声を掛けると、その人は顔を上げて近くの椅子に座るように指示を出した。
「こちらの紙に名前とジョブを記載下さい」
指示に従って椅子に座ると、名前とジョブを紙に記載するように言われた。
この1年でセリアさんに文字や計算を習ってきたので、自分で紙に記載する。
「ジョブについてなのですが、分からない文字で表示されている場合はどうすればいいでしょうか」
私の言葉を受けて、本当に分からないのか、1つでも分かる文字は無いか、と聞かれたが分からない旨を伝えた。その人は奥で書類を確認していた年配の男性の元へ行き、何かを話し始めた。
「お待たせしました。
その分からない文字についてですが、その文字を表示とできるだけ同じように書いてもらえますか?
王都の研究所で調べてみますので」
しばらく待っていると、できるだけその文字を表示と同じように書いて欲しい、と言われた。
今までに無かったことらしく、確認のために複製して王都の研究所で確認してもらうことになる、とのことだった。
そこまで大事なのかは分からなかったが、他の人に知られても問題ないため、ゆっくり時間を掛けて記載をする。
何度も確認をしながら記載を終えると、年配の男性はそれを持ってどこかに行ってしまった。
「本来、これから交付するマイカードにはジョブを記載するのですが、分からない文字を記載できないため空欄になります。
代わりに補足情報の欄に調査中と記載する形になります」
マイカードが何なのか分からずにいると詳しく教えてくれた。
このマイカードは、所有者の名前、ジョブ、所持金、補足情報が記載されるものであり、祝福を受けた全員に交付されることが国の規定で定められていること。補足情報は領主や各種ギルドが必要に応じて記載するものであること。ギルドで依頼を受けた場合はそこに記載がされ、討伐の依頼の場合はそこに討伐数も記載がされること。マイカードは特殊な魔道具によって発行、記載が行われること。祝福を受けた人は『マイカード』と詠唱するとカードを右手に出し入れできるようになること。所持金はマイカードに格納され、お金の支払・受取は右手同士を握手することで実行できること。
説明を一通り受け終えた頃、年配の男性がマイカードを持って戻ってきた。
マイカードを受け取り、記載を確認する。
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名前:ディックス
ジョブ:
所持金:0G
補足情報:ジョブは読めない文字での記載のため王都にて調査中(クロス伯爵領)
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説明された通りに記載されていた。
手続きを終えたため、私はセリアさんに連れられて領主館を後にする。
「マイカードで支払いをすると教えてもらいましたが、実際にどうやるのでしょうか?」
「じゃあ実際にやってみましょうか。手を出して下さい」
セリアさんの指示に従って右手を出す。
その手をセリアさんが握り、握手をした状態になった所で、
「10Gを支払います」
とセリアさんが言った。
何かあるかと思ったけど既に支払いは終わっているらしい。
「マイカード」
と詠唱してカードを確認すると、
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名前:ディックス
ジョブ:
所持金:10G
補足情報:ジョブは読めない文字での記載のため王都にて調査中(クロス伯爵領)
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しっかり所持金が10G増えていた。
「こうやるんですね。分かりました。
では10Gを返します」
「それは差し上げます。
マイカードを受け取った子に必ずやる儀式みたいなもので、孤児院でも全員やっていることでもらっているので、ディックスももらっておきなさい」
ありがたくいただくことにした。
カードとスキルについて考えようと思いながら孤児院に帰ると、セリアさんとスワンさんに院長室へ呼ばれた。
まだ何かあったかな、と思いながら部屋に入り、言われた通り椅子に座って2人に向き合う。
「さて。10歳になった子には必ず伝えることがあります。
何となく勘付いているかもしれませんが、この孤児院は14歳になったら出ていく、という決まりがあります。つまりあと4年後です。1人の例外もありません。
それまでに孤児院を出ていった後にちゃんと生活ができるように仕事を探したり、お金を貯める必要があります。
どうしたらいいか分からなかったら相談してください」
そうか4年か。この1年間の鍛錬を思い出せば、4年もあっという間に過ぎてしまうだろう。
そう思い、早速次の行動に移ることにした。




