嘘告白されたのにキスされたんだが…
俺は嘘が嫌いだ。
嘘を吐いたってなにも得がない。遅刻の嘘の理由に「道端でおばあさんを助けてて」なんていう奴がいるだろ? もし本当だとしたら悪いが、遅刻は遅刻なんだから嘘を吐かずに寝坊しましたでいいじゃないか。それで怒られたら、怒られた、だ。
他にもあるぜ?
この間、勉強してない自慢をしていたやつがいた。勉強していなかったら普通、問題を解けるわけがない。容量がいいのかもしれないが、勉強しているって言えばいいのに。勉強していないことを褒めるやつなんて誰もいないだろ? 逆に勉強してなくてそんなこと言っていたらウザがられる。
まぁ、そんな嘘は些細なことなんだ。俺が嘘を嫌いになったのは、この学校で今、流行っている”あれ”。
そう、”嘘告白”。
なぜ流行っているかなんて知りたくもないが、カースト上位のやつらが急にやりだした。俺はそのターゲットにされたってわけだ。それも3回も。
1回目はクラスの1軍女子の篠川美優。
人気者だった彼女に俺は突然、告白された。その時は嘘告白なんてまだ流行ってなかったから、何も接点がなかったとはいえ、すぐにOKしたよ。当然だ、初めて女子に告白されたんだから。それもクラスで人気な美少女と。俺も普通の男子高校生、舞い上がっていたんだ。
ただ俺はあいつにまんまと騙された。
1ヵ月だ。付き合って1か月が経った日。俺は1ヵ月記念のプレゼントを渡そうとしたのに、教室に入った途端、クラス全員の前で「ごめんね、あれは嘘告白だよ」と言われた。何も分からず慌てふためく俺を見て、全員が笑っていたのを忘れはしない。
その時からだ、嘘が嫌いになったのは。
2回目は別のクラスの――誰だったっけ。思い出したくもないが、告白された後に「嘘告白だよ、びっくりした?」と言われた。それだけのために呼び出された俺の身にもなってくれ。
もう告白されても信じない。そう思っていた次の日だ。3回目が――
「って、あれ? なんだこれ」
皆が焦って登校してくる遅刻ギリギリのこの時間。校門をくぐり、いつものように上履きを取り出そうと、下駄箱を開けた俺の前に1枚の封筒が落ちてきた。桃色の封筒だ。ハートのシールで封がしてある。下駄箱にでも入れてあったんだろう。
まぁ、こういうこともあるよな。
――って、ちょっと待て。誰のだ? 隣のやつのか? いや、俺のだ。まてまて、なんで俺の下駄箱に封筒なんて入ってやがる!
しかも桃色の。そんなの3回目のあいつのラブレター嘘告白と同じだ。
落ちつけ、まだそうと決まったわけじゃない。ラブレターじゃないって可能性もあるわけだし。他の人のところに入れ間違えた可能性だってある。
そうだ、中身を確認してみようじゃないか。これで分かるはず――
『斉藤佑馬君。お話があります。今日の放課後、屋上で会えませんか?』
俺の名前じゃねぇか! なんで俺なんだよ。そんなに俺って、お前らが何度も笑うほど反応いいのかよ。
「……はぁ、きっとこれからもずっと嘘告白だけされて、高校生活は彼女ができずに終わるんだろうな」
俺も高校生だ。彼女か欲しい。嘘で誤魔化した遊びじゃなく、遊園地や海に行ったり、楽しいデートがしたい。それ以上のことは大人になってからだと思うが、これ以上嘘告白され続けていたら、本当の告白なんて――
いや、待てよ。嘘告白さえなくなれば、告白されることもあるんじゃないか。嘘告白のターゲットにされなくなれば、俺を好きっていう人も普通に告白できるかもしれない。
「よし、もう、今回は騙されてやらない。相手は俺を利用して笑いものにするために嘘告白をしているんだ。だったら、利用してやる! 楽しかったと思わせて、お前のことを好きだと勘違いさせて、思いっきりフってやる!」
――――――――
そう思って、嘘告白に付き合おうとしていたんだけどな……。
「ねっ、嘘告白じゃないんだよ?」
何で俺は今、キスをされているんだろう?
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