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SKY RUNNER -空の向こうへ続く風は-  作者: じゃがマヨ
第1章 空の旅路へ
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第1話


挿絵(By みてみん)




アストリアの朝は、風の歌から始まる。


浮遊する草原を撫でる柔らかな風が、村の木々を揺らし、屋根に吊るされた無数の風鈴を鳴らした。

どこか遠い空から流れてきた旋律のように、風鈴の音は夜の名残を優しく払いのけ、村に目覚めの気配を運んでくる。


トレイン・フェザーネットは、まだぬくもりを宿すベッドから這い出し、簡素な窓を開けた。

目に映るのは、広がる空の海。

遥か彼方、白い霧に包まれた漂流島が、ゆるやかに流れていく。

その向こうに、どこまでも高く伸びていく雲の峰が見える。


——地平線の彼方。


その、果てしない「青」の先へ。



朝露に濡れた地面を踏みしめ、トレインは村のはずれまで歩く。

断崖の縁に立つと、風が一層強く吹き抜け、彼の水色の髪を大きく撫でた。

眼下には、幾重にも重なる雲の層が広がり、その下には見えない地上の大陸が眠っている。


「今日も、いい風だ」


誰にともなく呟いて、古びた訓練用の短剣を腰に下げた。


朝のルーティン——風を読むための訓練。

それは村長ダリオンから課せられた、何よりも大切な修練だった。


雲の流れ、葉擦れの音、わずかな気圧の変化。

この村で生きる者にとって、風はただの天候ではない。

生きている。

語りかけてくる。

だから耳を澄ませ、心を澄ませ、“風の流れ”を感じること。


トレインは小走りに断崖を離れ、木立の間を縫うように走った。

風を背に受けるときも、逆巻くときも、決して流れに逆らわない。

軽やかに、しなやかに。

風の鼓動と自分の呼吸を重ねながら、彼はひとつひとつ、村での修練を積んできた。



村の中央広場では、朝市の準備が始まっている。

白布を張った屋台に並ぶのは、風干しした果実や香草、空飛ぶ魚の干物。

子供たちは、捕まえた風灯鳥を手にして走り回り、年寄りたちはカゴを編みながら笑い合っていた。


そんな穏やかな情景の中にも、トレインはふと、微かな違和感を覚える。


空気の隙間に、何か——

まるで異国の風が、村の境界を越えて忍び寄っているような気配。


トレインは振り返る。

だがそこにあるのは、いつもの空と、いつもの風だけだった。


それでも胸の奥に、小さなざわめきが残る。

何かが、変わり始めている。

何かが、遠くの空で目覚めようとしている。


それを知る者は、まだ誰もいなかった。


この空のすべてが、やがて世界を揺るがす旅の始まりになることを。




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■ トレイン・フェザーネット



▼ プロフィール


【項目/内容】

□ フルネーム / トレイン・フェザーネット

□ 年齢 / 16歳

□ 性別 / 男性

□ 出身地 / 浮遊村アストリア(ヴェントゥス大陸)

□ 身長 / 170cm

□ 体重 / 58kg

□ 職業 / スカイランナー候補生(風裂祭参加者)

□ 武器or道具 / 風読みの双剣、風纏布カイトクロス

□ 属性 / 風




▼ 人物像


トレインは、空に憧れ、風と星を誰よりも愛する少年。幼少期からアストリア村の断崖で風と語らい、名もなき星に小さな誓いを立てる日々を過ごしていた。

性格は明朗快活だが、同時に繊細な感受性を持ち合わせており、「聞こえない声」に耳を傾けることができる数少ない存在である。


強い正義感と探究心を持つ反面、自分の非力さに苛立ちを覚えることもあり、物語序盤ではしばしば無鉄砲な行動をとる場面も描かれる。

しかし、風裂祭を通じて「風の声=忘れられた者たちの声」を拾い集める中で、少しずつ真の強さと優しさを学んでいく。




▼ 能力・技能


風感知能力ウィンドセンス

微細な風の流れや異常を感知する特性。漂う言葉や隠された道標を見つけ出す力として描かれる。


・空間察知力:

空中に存在する見えない障害(風罠、霧穴など)を本能的に回避できる身体感覚。


・航行技術:

小型飛翔機(スカイボード、エアライド)を操縦する高度な空間機動技術を持つ。これは老スカイランナー・ダリオンから直接叩き込まれた。




▼ 関係者


・ダリオン:

村の長老であり、トレインの師。風を読む技術と、空に生きる覚悟を教えた。


・アストリア村の仲間たち:

村に住む子供たち。特に家族のように親っているのは、陽気な航海士志望の少年カナト、冷静沈着な少女メリア。


・帝国ヨルムンガンド:

敵対勢力。トレインは、彼らの暗躍によって村と仲間たちが脅かされる現実に直面していく。




▼ 物語上の役割


物語におけるトレインの役割は、「忘れられた記憶を拾う者」であり、さらに言えば、「記録されざる者たちの希望」となる存在である。


彼の旅路は、風に消えた言葉を拾い集めることから始まるが、やがてそれは、世界の崩壊と再生を巡る“十二の大陸”を繋ぐ使命へと繋がっていく。

無名の少年であった彼は、やがて「空を越える者」として、すべての記憶を繋ぐ鍵となる。



備考


・名前の「トレイン (Train)」は「航路(Trajectory)」「導き(Train)」に由来し、旅人としての運命を象徴している。

・好きなものは風、星、甘い干し果実。

・苦手なものは閉じた空間と、支配されること。



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