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氷のままで  作者: 伊藤@
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最終話




 稀人がこの小さな国へ帰ってきたのはそれから五年後の事で、彼女の横にはピッタリと護衛騎士がへばりつき、鬱陶しそうにあしらう彼女と嬉しそうに笑う護衛騎士に久しぶりに会った陛下は殊の外喜んだ。


「戻ってきてくれたのだね」

「そうですね、世界中見て回って、陛下の国が一番呼吸がしやすかったから」

「それは良かった、時にキョウコ殿とヒースは…」

「護衛と護衛対象です!」

「……」


 にこやかに微笑み恋愛対象では無いと宣言するキョウコ殿と憮然として無言になるハロルドを見て王は軽やかに笑った。

 ふとキョウコ殿の肩にトカゲがへばり付いている。


「おや…これは竜人ですか?珍しい」

『唯のトカゲじゃ、妾の事は捨て置け』

「あぁ成る程、キョウコ殿は色々と好かれてますね」

「私の大切な友達です」


 少し照れながらも彼女は微笑んだ。


 


□□□□□





 幾つの歳月が積み重なったか。


 彼女の騎士は彼女を守り慈しむ。


「随分長く守って貰ったね」


 ベッドに横たわり、この世界の平均寿命よりも早くに彼女の命は陰った。三ヶ月間延々と壊された影響で肉体は元には戻ったが寿命はかなり削れたのだ。


「私はキョウコ殿の騎士ですから、これからもずっとお守りします」


 彼女の細くなり軽くなった手を両手で握る。ハロルドの肩にはトカゲが乗っている。


「ごめんね、ハロルドの気持ち知ってたのに応えられなくて。

 リーファ、ハロルドと喧嘩しないでね」

「いいえ、いいえ…どうか謝らないで下さい」

『喧嘩はもうしない!』


 目も開けることすら難しい。

 知っていたの、貴方が優しい事も私をずっと愛していてくれた事も、私がこの世界の全てを憎んでいてもいいと思っていてくれているのも。

 どうしても許せない事も。

 全て全て。


「キョウコ殿がこの世界を許さなくて良いのです、許す必要もないのです」


 ハロルドの最後の声を聞いた。

 あぁ、さようなら、やっと。


「キョウコ殿は。あぁ!!キョウコ殿!!」

『キョウコ!!』


 ふっと力が抜け、キョウコは死者の国へと渡った。





 稀人の騎士は、稀人の墓を守り続け最後の瞬間まで彼女の側に居た。

 自分が死んだら彼女の墓の隣に騎士の像を建ててくれと遺言に残し、流石の執念よと皆を唸らせ、今日も騎士は彼女を守り、その肩には小鳥がとまり平和に囀っている。


『さて、妾もそろそろ旅に出るかのう、二人共また会いに来るぞ』


 稀人の墓と護衛騎士の像に別れの挨拶してリーファは思う。


 竜人の長い人生だ、もしかして生まれ変わった二人に会えるかもしれないしと、少しだけ楽しみに思いながら旅立った。







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