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氷のままで  作者: 伊藤@
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南の国 竜の姫


 我が君、そうじゃのう外界風に言うと旦那様じゃ。その旦那様とは血が近く、竜人は元々子供が出来にくいのじゃ、だから幼い子供は妾と旦那様だけ。

 幼馴染でそのまま周囲の勧めもあっての、夫婦となり竜国の次代の王と王妃として恥ずかしくないように精進してきたのじゃ。


 子が出来にくいと周りが騒がしくなったのは婚姻して二十年過ぎた頃かの、竜人の子供の出来なさは五十年はザラなので気にするなと旦那様は仰っていたのじゃが。


 去年いきなり側妃を娶り、あっという間に卵も産まれたのじゃ。

 なんの根回しも無くいきなりの事での、呆然と成り行きを見ている間に、卵が盗まれ四方八方探させておったのよ、アゼラ国の助力より卵は見つかったそうじゃが、既に石化しておったらしい。


 卵を盗んだ犯人がよりによって妾だと。旦那様に詰め寄られたのじゃ。

 あの瞬間、婚姻した時に呑み込んだ旦那様の逆鱗が体の中で砕け散ったのじゃ。

 逆鱗とは何かと?ああ竜人同士の婚姻の証の様なものじゃ。簡単に言えば互いの逆鱗を呑み込む事で特別な存在になるものじゃ。砕けた逆鱗の痛みとなにやら竜気が膨れ上がっての気が付いたら魔鳥共に突き回されてたのじゃ。


 は?戻るわけなかろうが。

 妾はもうただのトカゲとして生きるのじゃ。

 もう真っ平御免なのじゃ。関わりとうない。

 お前、助けたのだから最期まで面倒をみるのが筋であろう。

 

 卵の中から声が響いてくる。

 いやね、元凶共の姿が映し出された水晶に悪態をついていたら、急に卵に籠もったトカゲちゃんが身の上話をしてくれた訳で。


 まあ、トカゲ一匹飼えるけども、なんか陰謀臭いでしょう。モヤモヤするからもっと深く探索した。


「ねぇトカゲちゃん、産まれた卵に触れた?」

『子が生まれたら大人の竜が触れるのは習わしじゃ』

「ええとさ、緑色の竜人知ってる?」

『あぁ旦那様の側仕えじゃ、竜王の遠い血筋で優秀だと評判の竜人じゃのう』

「水色の竜人は?緑色のスカーフしてる」

『側妃のランじゃ』

「…この二人さあ、付き合ってるの?」

『はあ?!なわけなかろう!旦那様の側妃と通じていたら八つ裂きじゃぞ!』

「え…でもなんかキスしてるんだけど…」


 ビシッと殻にヒビが入って、中なら可憐な幼女が這い出てきた。


「ひえっ」

『妾に見せるのじゃ!』


 水晶に映し出された竜人は妖しく絡み合っている。

 ビリビリと何かが膨れあがると、扉からハロルドが血相かいて部屋に飛び込んできた。


「何事でしょうか!はっ?!竜人よ怒気を抑えて下さい!!」

『……妾、小奴らに嵌められたのか?』

「そうみたいだね?」

『う…うわああああああん』


 幼女は号泣した。







 泣きつかれて丸くなって寝てしまった。


「と、言う訳なんで」

「それはまた」

「取り敢えず竜国へ帰りたいかわかりませんが、落ち着くまでは一緒がいいですかね」

「そうですね、この方は時期竜王妃のリーファ殿でしょう、竜国に伝手もないのでなんとも言えませんが」



 こうして南の国の夜は更けてゆく。






『我が君のと子供ではないから、バレる前に石化させたのか?』

「そうなりますね」

『そうか…それを妾になすりつけたのか』


 次の朝、幼女はまた殻に籠もっていた。殻の中から声はぼんやりとしている。


『娘』

「はい?」

『妾をこのまま海に捨ててくれぬか』

「え、嫌ですよ、拾ったら責任持てっていったのはトカゲちゃんでしょ?」

『そうだったの』

「トカゲちゃん取り敢えず殻の中にいなよ、暫く旅するからさ」

『……すまぬ世話になる』


 でも、あの白い奴と緑の奴と側妃っての?落とし前はつけさせないとね。


「キョウコ殿大丈夫ですよ、そう遠くない内に竜国滅びるかもしれないので」

「え?!滅びるの?え、なんで?」


 ハロルドはにっこり笑う。


「我が王の嫌がらせです」

「嫌がらせ…ええ…嫌がらせで滅ぼすの?」

「直接は手を出しませんよ、勝手に滅ぶ道を選んでるみたいですし。

 リーファ殿も一緒に滅びますか?、それとも滅ぶのを止めますか?」

『なんとも意地の悪い騎士殿じゃのう。

 そう妾はもうトカゲじゃ、どうなろうとトカゲには関係ない、最期を見届けるだけじゃ』

「承知した」




 ハロルドが言った通りに竜国と朱雀国は小競り合い始めて、私達が次の国へと旅立つ頃には本格的な闘争になっていた。









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