閑話・竜国
竜人の住む竜国は空の上にある。
竜国は広大な浮き島で独自の文化を守っている。
竜人はプライドが高い。空の上にいるからなのかプライドは空より高い。傲慢で竜人以外は虫けらと本気で思ってる種族。排他的とまではいかないが竜人以外はどうでもいいのだ。
まるで良いところは無いが、虫けらが何をしようと興味を示さないだけマシとも言われている。
他種族の中には弱い種族を捕まえて殺すのを好む者達もいるので。
竜人は長命で竜人同士で子孫を残す。但し長命の弊害なのか子供は出来にくく生まれても孵らない事もある。
竜人は卵で生まれる。
子孫は竜人にとってそれは大切な宝だ。
「なにか言い訳はある?」
「我が君!妾は潔白で御座います!」
大きな肉体に端正な顔立ち白い肌に鱗が煌めき立派な竜角が生えている竜人が冷たく見据えるのは妻だった女。
あの占いで漸く取り戻した卵から感じた竜気で辿り着いたのが正妃だった。
「リーファ何故だ」
「我が君信じて下さいませ!」
ハラハラと真珠粒の涙を流す。自分とは従姉妹同士で血も近い可憐な女。婚姻して二十年、子が出来ず側妃を娶ったのが昨年、すぐに卵が生まれたのが今年の事。
卵として生まれ、卵を父母の竜人の魔力で温め孵化を目指す。二年温め漸く子が孵るのだ。その大切な時期に卵は盗まれ隠された。その期間は二週間。
乳白色で光輝いていた卵は、見つけた時には既に石化が進みただの石と成り果てていた。
遅かったのだ。
「何故だ…リーファ…我らは上手くいっていたのではないか?」
ビタリと涙が止まり驚愕の眼差しを向けた。
「我が君、信じて頂けないのですか?」
竜気という証拠があり、動機もある。侍女に指示したと証言もある。なにより正妃は可憐な見た目と違い本性は苛烈だと血が近い故に知っている。
「ああ、信じられぬ」
伝えた瞬間の正妃の表情、何よりもその目。一生忘れないだろう。
リーファは絶叫ともいえる咆哮を放ち竜化すると忽然とその場で消えてしまった。
「な、何だと!探せ!探し出せ!子殺しめ!」
この日、リーファは大罪人となり世界中を探される事になった。
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中々見つからず苛立つ若君にザヌアが進言する。
「若君またあの占い師に探させたら如何でしょうか」
「あぁ、その手があったな」
ザヌアは意気揚々と竜化しあの小さな国へ飛んだ。
そのザヌアがいくら待っても戻って来ず、側妃は卵が石化したと聞いてから寝込んでしまった。未だ見つからないリーファに苛立ち、痺れを切らして問いただせば、戻ってきたのは二週間も経った頃でザヌアは廃人と化していた。
ザヌアのついでに占い師を寄越せと言っておいたのにその占い師は国を出て行方知れずだという。
何があったと調べようとすると、横から天敵の朱雀人達が小競り合いを仕掛けて天空の領土で戦いが始まる始末。
頭を掻きむしり全てが上手く行かない事に腹を立てた。