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氷のままで  作者: 伊藤@
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トラブルの予感


 この世界で失せ物探し屋をしている。店の名前もそのままだ。

 失くした物を探したり、家出した猫を探したり、細々と商いをしている。

 偶に大口の顧客からの仕事が入るから贅沢しなければのんびりとやっていける。

 休みの日はゴロゴロしてうたた寝し、怠惰の極みを満喫している。今日もダラダラしながら最近流行りの小説を読んでいた。

 小説に夢中になってご飯時を過ぎていたようでお腹が鳴る。うーん、お腹が空いたけど動くのは嫌だ。ギリギリまでも何もしたくない。


トントントン トントントン


 何か音が聞こえる。

 あー、聞こえない、私は留守です。


トントントントトトトトトトトトト


 しつこい!!余りのしつこさに扉を開く。


「店主済まない!緊急なのだ」


 竜人かよ。

 休みの日なのに面倒臭い。扉の前には竜人が立っていた。顔色も良くないし目も血走っている。

 白、赤、緑、三人の竜人は共に背丈は二メートルは超え筋骨隆々であのハロルド様よりもマッチョ。肌はそれぞれの竜色を纏い頭には竜角。

 白い竜人が名乗りもしないで話し出す。


「卵が盗まれた!頼む見つけて欲しい!!」

「卵…お子ですか?」

「そうだ!先月産まれたばかりの、あぁ!早く暖めなければっ」

「若様落ち着いて」

「人間よ、早く占え!」


 お付の者感じ悪。若君も感じ悪。竜人に対する好感度がどんどん低くなる。

 扉を開き渋々招き入れると、竜人達は勝手にソファに座って喚いている。


 誰だよ、教えたの。脳筋か?。


「依頼料は五十万バルド、見つかったら五十万バルドで御座います」

「な、たかが占いで百万バルドだと!?」


 赤い鱗の竜人が吠えた。

 愛想笑いでムカつきを抑えながら赤い竜人を見た。


 たかが。

 たかが占い。

 その、たかが占いにあんた達必死になってるのにね。

 目の奥は冷えたままにこやかに無言。

 気圧された赤い竜人が息を呑む。


「控えろザヌア!頼む居場所を!」


 白い竜人がテーブルに五十万バルドを置いた。


「それでは、血縁者の血か髪の毛どちらでもいいので貰いま」

「これを」

「若君!!」


 言い終わる前に白い竜人はサクッと左手を自分の爪で切り裂いた。

 いや、そんな要らないし。

 ってそこで切るか普通、テーブルから床から血塗れだよ。

 従者が慌てて手当を始める。

 部屋になんとも言えない血の匂いが広がる。勘弁してよぉ、深くため息をつきたくなるが、気持ちを切り替える。


 私の異能は探索。

 スキルという枠組みなので魔力も神力も必要ない。

 初対面の縁もない赤の他人の居場所、探してくれと言われても答えがあやふやになる、だから血という媒体で情報精度を上げる。

 第二王子も最初は父親がやって来たっけ、あん時はびびった。

 テーブルにビシャっと飛び散った血を人差し指にちょいとつけて水晶に触れる。


 水晶に黒い建物、海、木の樽が映った。


「黒い建物、海、木の樽」

「黒い建物に海…何処だ?」


 漠然としてる、もう少し限定したい。深く集中する。

 赤い海鳥、青い灯台、橋、船…船の横にはマリナツ客船の文字。


「赤い海鳥、青い灯台、橋、船、名前がマリナツ客船」


 ガタリと緑の竜人が立ち上がり飛び出して行った。残った赤い竜人が白い竜人の手当てを続けている。切り過ぎだよね、それ。

 最後に水晶に現れ陽炎の様に消えたのは。


「…蒼いスカーフ…」


 ポツリと溢したそれに、ギョッとして私を見る竜人。手当も終わり緑を竜人の後を追い掛けるのだろう、立ち上がり残りの金をテーブルに置いて出て行った。


 名乗らない、礼も言わない、テーブルも床も金も血塗れでこれの掃除をすると思うと……休日を潰され空腹でブチギレながら、あの竜人達が二度と来ないように結界を張る。


 最低、竜人まじで最低。



 □□□□


 正直、自分が占った後日談なんかこれっぽっちも興味がない。寧ろ聞いてしまって雁字搦めに抜け出せなくなるのが怖い。


「その後の報告は特に必要ありませんが…」

「え?その後どうなったか興味ないのですか?」

「質問に質問で返すのは良くないと教わりませんでしたか?」

「いやまあ。そうなのだが!

 あの後、竜国の大使からそれは感謝されまして」

「…良かったですねぇ」

「何でも子の出来ない正室の侍女が側室が産んだ卵を」

「ストップ!それ以上はやめて下さい」


 侍女って言うけど、それ正室が指示したって事でしょ…怖。あの白い竜人って王族だろうな。ぶるっと身震いして鳥肌が立った肌を擦った。


「大変感謝されてキョウコ殿を竜国に招きたいと」

「え?」

「勿論、我が王が丁寧にお断りしておきました」


 竜国なんてとんでもない、非力な人間が行ったら最後、二度と自由なんてなくなる。こっわ。あんな偉そうで礼儀も何も無い竜人なんてろくなもんじゃない。


「わかっております。その為に我が王が庇護しております。

 ただ今回は命がかかっておりましたのでキョウコ殿にお願いした次第で、はい」


 真っ青になって頷く。

 分かるよ。命かかってたらそりゃね。でも、この国がいつまでも大国で近隣諸国ましてや竜国なんかに力を保っていれる保証もない。


 酷い記憶が蘇る。たった三ヶ月でも一生忘れられない。


 あの地獄から救ってくれたのはこの国の王様のお陰。分かってる、でも救い出されて恨んでる気持ちもある。

 だから心から感謝もしてるけど、素直になれないし、なりなくない。

 


 心身ともに助けられて動ける様になって、自立する時に面倒事には巻き込まないって誓約があるから信用していた。この国の私への待遇は特別、その分第二王子や別件でキチンと借りは返している。筈…多分。


 色々と考え込んでいる私に。


「出奔される時は某も供する所存であります」

「まだ何も言ってません!」


 嫌な予感はするけど、爽やかに笑うハロルド様を見て、まあ、まだ平和と言えるのかな?って。


 明日はどっち?生きるのって大変だ。




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