私の近況
私はこの世界に召喚された。
召喚された日から三年経つ、気が付けばあっという間。頬杖ついて欠伸しているなんて想像すら出来なかった。
「キョウコ殿いるか」
扉を強めに叩いているのは騎士のハロルド・ヒース様だ。
「開いております」
バアンと音がして壁に叩きつけられる扉。そろそろ壊れるんじゃないって思うけど、壊れたら修理代を請求すればいいか。
姿勢を正してニッコリと営業スマイルでヒース様を迎える。
「本日はどうされました」
金髪、碧眼、イケメン、マッチョ、脳筋なヒース様にいつものご挨拶。
「殿下が行方不明なんだ!居場所を占ってくれ!」
「まぁ!」
まぁ!の後に続く言葉は『またかよ』である。
「至急頼めるか!」
「はい、勿論でございます」
この国の第二王子様はよく消える。いつも自分の意志ではないのが可哀想なのだが。この脳筋は第二王子様の護衛騎士なんだと。護衛騎士なのに護衛出来ていなのも理由があるけど。
商売道具の水晶に手を翳すと、水晶の中に緑の樹木が映る。
「緑の樹木」
「何処にでもあるぞ!!」
相変わらず煩いな。水晶の映像がぼんやりと変わり天使の噴水が映った。
「天使の噴水」
「天使の噴水…あっ!北の公園か?!感謝する!」
「お代はいつもの様に振り込んでおいて頂けると…」
「心得ておる!」
あっという間に店から飛び出で行った。いつも支払いをしてくれるから上客とは言えるけど、他にお客が居ない時で良かった。
でもまぁ、いつも客が居ない事の方多い失せ物探し屋なんですけどね。
件の第二王子様は、妖精のお気に入りでちょいちょい妖精に拐かされている。周りはまたかと思ってるけど本当の誘拐もたまにあるから気は抜けないそうだ。突き抜けた美貌っていうのも大変だ。
美丈夫な国王様と幼少の頃から傾国の美しさと名高い王妃様との間に生まれた第二王子様は王妃様似でそれはもう天元突破の美幼児だ。
因みに第一王子と第三王子は王様似で美形ではあるがそこまでと言われている。
今日は第二王子様の案件だけで二ヶ月分の収入になったから午後は閉めようかと思っていたら発見された第二王子様御一行が来た。
面倒くさい、なんて思っていても顔には絶対に出さない。
「これは第二王子様、こんなあばら屋にどうされましたか」
「キョウコ!いつも見つけてくれてありがとう」
「いえいえ、お役に立てて光栄でございます」
ニコニコと笑いながらヒース様の片腕に抱っこされている美貌の第二王子は御年六歳、天使が生身になったらこれだって感じ。
ドヤドヤと第二王子御一行様が帰った、本気で疲れたので店仕舞いだ。
今日も異世界でしぶとく生きてます。
あーだるい。