5:天才は学年に一人いるのに、リア狂は学年に一人もいない。
おはようございます。
いつも通りにいつも通りな、いつも通りの朝。
一週間前に決闘してたとは思えんね。
あれから高井は昼時に話しかけてこなくなった。平和。
朝ごはんは食べない。
小食な方だからいつも食べるのは晩御飯だけで、弁当は高井に「作ってこい」と言われていたから持って行っただけ。
洗顔諸々済ませて、最後に着替え。
さて、学校に行きますか。
教室に入ると、異様な空気。
見ると、高井がえぐいほどの鬱オーラを放ってる。
「あ、おっは~」
話しかけてきたのは高井の取り巻き、朝香優希(♀)。
異常なほどの早口から聞き取るに、
――― 高井と取り巻きが談笑中、不意に一人が私の名前を出した。その時の高井のビビりようを面白がり、朝香がゲームを持ち掛けた。「ここにいる六人と高井がじゃんけんをして、勝率が五割切ったら高井は若狭に前と同じことをされる」―――
・・・いや、聞いてないんですけど。てか前私がやったこと知らないでしょ。
前と同じことって言われても気分じゃないし。
「なんかイヤソな顔してるけど、ねっ?ここはひとつやってくんない?」
そんなこと言われても・・・。
「よし、じゃあ取引だ!私も使っていい!」
・・・ハイ?
ツカウッテナニニ?
・・・マエノアレニ?
ダレヲ?
・・・アサカヲ?
ナゼ?
そこへ、担任がやってきた。
「あちゃ、残念。また今度」
あんだけイった目しときながら引き際はあっさり。
・・・何がしたかったんだあいつ?
高井の件は有耶無耶になった。