3:『勝負は焦る奴ほど負ける』は鉄則。
放課後。
言われた通り校庭へ。
この国には決闘制度があり、戦時の荒さを引き継いでいる。
決闘の勝者は敗者に命令を出せる。
昔は違ったが今は法律で『決闘をした場合、後六週間に亘り同じ人同士が決闘をしてはならない』と定められてる。
めんどい。
けど売られた喧嘩は買う前に値切りの喧嘩をするタイプだから。
校庭に着くとまさかの人だかり。高井が一人中心に居て、半径二十メートルほど離れて人が輪になっている。委員長は居ない。
「よーぅ。来たな。言いたいことは?」
初手それ?と思ったけど特に無いので首を振る。
「はぁん。ま、いーや。そこ立て」
指で示されたところに立つ。
よく見ると高井は貧乏揺すりをしている。
怒なのね。
「始めんぞ。蝉!」
どこからか、犀ほどの蝉が飛んでくる。
「ろうくん」
こちらは大型犬サイズの蟻が七匹。
一回り大きいのがろう。
その他はゆう、けん、れい、ひな、りあ、るな。
「ハッ!」
蝉が突進。
いや、号砲とかないんかい!
とりあえず回避。
蝉が反転し、再突進。
回避。
五度繰り返すも当たらず、高井に苛立ちが募る。
「・・・!!」
蝉が爆音を奏でる。
吹き飛ばないよう、蟻に固まらせる。
蝉は爆音を止め突進。蟻たちでそれを受け止める。
七体が蝉に噛み付く。
蝉が慌てて退避。陸では数の不利があると踏んだのか、空中へ飛ぼうとする、が。
「!??」
蝉の翅が根元から取れた。
ろうくんたちは黒大蟻モデルで、軍隊蟻のような強い噛み付きはできない。
なら何故か。
「てめぇ、何した!」
翅の付け根を指差す。
見ると、溶けているのが分かる。
蟻酸。
「!」
蟻が大挙して進む。
蟻酸が掛けられたのは翅だけではなく、脚や胴も。
「・・・ぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
勝負、あり。