第九話
焚き火の火を鍋の残り汁で消してから、小屋へと戻って寝る。
粗末な藁の寝床は、あまり心地の良いものではないが、寝るものがあるだけマシだ。
贅沢は言えない。
今はまだいいが、夏は暑いし、冬は寒すぎる。
小屋にはすきま風が通るから、去年の冬はピレと身を寄せあって眠った。
そういう時は、かつての家が恋しくなる。
暖炉のある暖かい家、優しい家族に、あの美味しい食事。
眠るのはちゃんとしたベッドで、毛布はぬくぬくと温かいものだった。
起きたら彩り豊かな食事を食堂でとって、それからじいちゃんや家人の子と遊んだり、座学を受けたりした。
時々、こちらが夢で、本当は朝起きたらいつものようにふかふかのベッドにいるのではと思う。
けれど、そんなことはない。
こちらが現実だ。
懐かしいあの家は、村はハルニアの兵によって焼かれた。
突然のことで、俺は何が起きたのかは分からない。
いつものように家にいると、慌ててじいちゃんが入ってきて、俺を裏の森へと連れていった。
「走れ!」というじいちゃんの、その鬼気迫る表情に、俺は意味も分からず背を向けて走った。
走り続け、開けた小高い場所へ出たとき、ふと振り返ると村が炎に包まれていた。
俺は、それを見て泣きながら走り出した。
頭の中は、疑問でいっぱいだった。
なんでこんなことに。なんのために。俺たちが何をしたのか、と。
こうなった理由は分からない。
それよりも少し前、隣村が焼かれ、幾人かが逃げてきたときのこと。
母ちゃんになんでと聞くと、「そういうものなの。考えてはいけないわ」と抱き締められた。
しばらく走り続け、途中で休んで、また走った。
どれほど走ったのかは分からない。だが、空腹に耐えられなくなった頃、水を飲もうと近寄った泉のそばで倒れた。
その時のことは、はっきりと覚えている。
泉の側で倒れた俺は、ぼんやりと、死ぬのかなぁと思っていた。
視界は微かに白く曇っており、少しでも動くことが億劫だった。
視界の白は、ゆっくりと広がっていく。
意識を手放そうとしたときに、耳が足音を聞き取った。
人か、獣か、それとも──
意識が再び浮き上がってきて、
「おい、大丈夫か?」
との声が聞こえてきた。
気遣うようなその声に、何故か、どうしようもなく嬉しくなってきて、涙がこぼれた。
すると、急に空腹をよりはっきりと感じ始めた。
「…は、らへっ…た…」
渾身の力を振り絞って、そう言った俺は、力尽きて意識を失った。
その後は、滋養のつく薬草を与えられて、なんやかんやあって、今こうして生きている。
そう思うと、なんか、こう、温かい気持ちになってきた。
「...ありがとう、ピレ」
横に寝転がるピレに、そう呟いた。
ちょっと気恥ずかしいなと、そう思っていた俺は、
「キモい、寝ろ」
との一言に切り捨てられた。
なんて酷い奴なんだ、こいつは。
と思ったが、さっきの言動を思い返しみて、これはキモいなと俺も感じ、すぐに寝た。