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第八話
祭壇と供物をそのままにして、俺たちは帰路へついた。
夕方近くには小屋にたどり着き、火を焚いてムスタファ鍋を作り始める。
ムスタファには塩が入っているらしく、ほんのりとした塩味がとても旨い。
鍋を煮る間、ピレはムスタファを干す準備をしていた。
俺はもちろん、鍋と火の番だ。
ピレは、ムスタファの葉の根本を切り、葉先に枝で穴を空けて麻紐を通していた。
こうすると、ムスタファの中にある水が垂れ落ちて、上手く乾燥するのだ。
落ちてくる水には、塩が混じってるから、大部分は垂れ流しにしているが、一部は溜めておいて塩として使う。
明日中にそれらを終わらせて、明後日には近くの木に干すのだろう。
それを見ると、あぁ、夏が来たんだと思う。
ピレと俺の、夏の風物詩だ。