第六話
夜、俺は外で兎肉を串に差して焼いていた。
側ではピレが、無言で野草と水を鍋に入れている。
鍋に入れる野草の少なさに、ふとケルハさんの話を思い出した。
「あ、ピレ。そういえばさ」
怪訝そうな顔をしてこちらを向くピレに、今日の話をした。
「…確かに、少なくなってるからな…」
ピレは眉間にしわを寄せていた。
しばらくぶつぶつと何かを呟いていたが、やがて、「もうすぐムスタファが生えるから、摘みにいくぞ」と険しい顔で言った。
ムスタファは野草の一種で、肉厚な葉っぱが特徴的だ。
水を吸うと嵩が増え、乾かせば長い間保存できるから、食べるのにちょうどいい。
しかし、とれる場所がここから少し離れたところなのだ。
はっきり言って、面倒くさい。
そう思っていることがバレたらしく、ピレの顔が徐々に歪んでいく。
不味い、そう思って慌てて「もちろん、今から楽しみだな」と答えると、少し顔が戻った。
「じゃ、明後日に行くから、覚えとけよ」
そう言って、ピレは野草鍋作りに戻った。
そこで、俺は串焼きを思い出す。
慌てて見ると、ところどころ黒く焦げていた。
「そんな!」
急いで焚き火から取り出したけれど、一部炭になってしまっている。
肩を落とす俺に、ピレは説教を始めた。
「あのな、せっかく生命をいただいているんだから、ちゃんとその自覚を持って…」
その晩は火が消えるまで、ピレの説教が続いた。
久々の肉は、焦げてはいても、かなり旨かった。