表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の新生活  作者: 夏のさくら
三年目の夏
6/13

第六話


 夜、俺は外で兎肉を串に差して焼いていた。

 側ではピレが、無言で野草と水を鍋に入れている。

 鍋に入れる野草の少なさに、ふとケルハさんの話を思い出した。

「あ、ピレ。そういえばさ」

 怪訝そうな顔をしてこちらを向くピレに、今日の話をした。

「…確かに、少なくなってるからな…」

 ピレは眉間にしわを寄せていた。

 しばらくぶつぶつと何かを呟いていたが、やがて、「もうすぐムスタファが生えるから、摘みにいくぞ」と険しい顔で言った。


 ムスタファは野草の一種で、肉厚な葉っぱが特徴的だ。

 水を吸うと嵩が増え、乾かせば長い間保存できるから、食べるのにちょうどいい。

 しかし、とれる場所がここから少し離れたところなのだ。

 はっきり言って、面倒くさい。

 そう思っていることがバレたらしく、ピレの顔が徐々に歪んでいく。

 不味い、そう思って慌てて「もちろん、今から楽しみだな」と答えると、少し顔が戻った。

「じゃ、明後日に行くから、覚えとけよ」

 そう言って、ピレは野草鍋作りに戻った。

 そこで、俺は串焼きを思い出す。

 慌てて見ると、ところどころ黒く焦げていた。

「そんな!」

 急いで焚き火から取り出したけれど、一部炭になってしまっている。

 肩を落とす俺に、ピレは説教を始めた。

「あのな、せっかく生命をいただいているんだから、ちゃんとその自覚を持って…」


 その晩は火が消えるまで、ピレの説教が続いた。

 

 久々の肉は、焦げてはいても、かなり旨かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ