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第五話
「そろそろ帰らないと」
風が少し冷たくなってきた頃、俺は帰り支度を始めた。
とはいっても、麻袋の服を着るだけだが。
涼やかな風にあたりながら、細道を通って帰る。
寝床へ戻ると、不機嫌そうなピレが待っていた。
帰りが遅くて怒っているのかと思ったが、まだ周囲は明るい。
話を聞くと、どうやらベリーがあまりとれなかったらしい。
「実をつけている茂みが少なくなってる。少し奥の方へ行ってみたけど、あんま良くはない」
そうは言うものの、籠にはたんまりと、ベリーや野草が積まれている。
脇には、捕まえたのか兎も転がっていた。
「ご馳走じゃん。肉なんていつぶりだっけ」
「さぁ。俺はいらないから、お前が食いなよ」
横を向きながら、払うように手を振ってくる。
「あ、そうか。ありがと」
こいつは宗教だか種族だかで肉が食えないらしい。
難儀だなぁと、思いながら俺はナイフで解体を始める。
そんな俺を横目に見ながら、ピレは立ち上がって、小屋の外に出て行った。