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終末世界の新生活  作者: 夏のさくら
三年目の夏
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第三話


 寝床である小屋から出た俺たちは、目の前に広がる森へと入った。

 ここら辺の森は人が近くにいないおかげで、常に豊かな実りを与えてくれる。

 下草を打ち払いながら、俺たちが作った細道を通って、奥へと進んでいく。

 途中で、道が二手に別れた。

「俺はこっち行ってベリーを摘んでくるから、お前はあっちの泉で水汲んでこい」

 そう言って木のバケツを渡してくるピレに頷く。

ピレの手には、ボロい籠があった。


 ここらの森には、魔物らしい魔物はいない。

 そのおかげで、俺たちみたいな子供もこうやって暮らせているんだが。

 せいぜいいるのは、スライムぐらいだろう。

 たまに、ゴブリンも現れることがあるが、会話ができるので争ったことはない。逆に親切だし。

 しばらく進んでいくと、少し開けた場所に出た。

 目の前には、澄んだ水のある、小さな池があった。

 その真ん中あたりから、こんこんと水が湧き出している。

 曇天を映すこの泉は、もし空が晴れたならば、とても美しいものだっただろうに。

 そう思いながらぼんやりと見ていると、頭の中でピレがさぼるなと怒鳴り出した。

 こんなところにまで出てくるなんて、こいつ。

 これ以上うるさくされる前にと、あわてて水汲みを始める。

 水の中にバケツを入れてから、ゆっくりと持ち上げる。

 それから、バケツの底を押さえて、慎重に走る。

これ、小屋と一緒に捨てられてたバケツで、かなりボロい。

 だから、水が底から漏れてしまう。

 幸い、ここから寝床まではしばらくもない。

 小屋まで小走りでいって、澱んだ水瓶の水を捨ててから入れる。

 それを何周か繰り返せば、二、三日分くらいの水がたまる。

 水が瓶の縁までいったのを確認してから、俺はもう一度泉へ向かった。

 そして、服(というにはお粗末だけど)を脱いで、泉に浸かる。

 初夏の今、汗をかいて火照った身体に冷たい水が気持ちよかった。

 これが、俺の二、三日に一度の贅沢だ。

 それから、しばらくは泉で水浴びを楽しんでいた。

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